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2025年12月5日金曜日

第321回研究会

 • 日時:2025 年 12 月 6 日(土)14 時~17 時

• 会場:日本大学法学部本館 141 講堂(4 階)

• 報告者:玉蟲由樹(日本大学)

• 報告判例:2025 年 7 月 15 日第 2 法廷判決(Urteil vom 15. Juli 2025 – 2 BvR 508/21 –)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2025/07/rs20250715_2bvr050821.html

• 判決要旨:

1. ドイツ連邦共和国には,外国との関連を有する事案においても,基本的人権および国際人道法の核心的規範の保護が確保されるようにする一般的な保護任務が課されている。

2. この保護任務は,事案に応じて,一定の条件の下で,具体的な基本権保護義務へと発展しうる。

a) 基本法 2 条 2 項 1 文にもとづくこのような保護義務は,生命の保護のために適用される国際法の遵守を目指すものであり,他国によって生じる危険もこれに含まれる。

b) この憲法上の保護義務をドイツ国籍を有する者または国内居住者に限定することを,憲法は定めていない。国外に居住する非ドイツ国籍の人々もまた,ドイツの国家権力との十分な関連性を有する危険から保護されうる。

c) 十分な関連性が存在するかどうかは,個々の事案の事情に即して,全体的かつ価値判断を伴う評価に基づき判断される。全体的な事象の一部であるとしても,単に偶発的に〔ドイツ〕領域と接点を持つにすぎないような領域的関わりでは,国外において基本権にとって重要な保護の必要性を生じさせるには不十分である。むしろ,基本権に拘束されるドイツの公権力との十分な関連性が成立するためには,一定の重要性を有する特別な関与が必要である。

d) さらに,一般的な保護任務が,第三国の行為に関して具体的な域外での保護義務へと発展するためには,生命の保護に資する国際人道法および/または国際人権のルールが体系的に侵害される現実的な危険が存在することが必要である。そのような侵害の発生が単に可能性としてではなく,現実に懸念されるに足る重大な根拠が求められる。

e) 第三国の行為によってこのような危険が存在するかどうかを判断する際には,外交および安全保障政策に関して権限を有するドイツの国家機関の法的見解を,それが合理的なものである限りで,尊重しなければならない。

クリップボード@月報333号

 Mitsuhiro Matsubara, Grundrechtliche Drittwirkung und Daseinsvorsorge, in: M.Borowski/J.-R. Sieckmann(Hrs.), Grundlagen der demokratischen Verfassung Festschrift für Robert Alexy zum 80. Geburtstag, 2025, S. 793.


甲斐素直「ドイツにおける政党助成金について―連邦憲法裁判所判例に見るその展開」(前編)会計検査資料 7 月号(684 号)66 頁


甲斐素直「ドイツにおける政党助成金について―連邦憲法裁判所判例に見るその展開」(後編)10 月号(685 号)78 頁


法学教室 542 号(2025)

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 19 回〕議院内閣制」


法学教室 543 号(2025)

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 20 回〕司法権」


法学セミナー847 号(2025)

・村西良太・伊藤健「FOCUS 憲法Ⅵ[第 4 回]芸術振興助成金の不交付決定と表現の自由をめぐる事例分析──「宮本から君へ」事件」


法律時報 97 巻 12 号(2025)

・松本奈津希「最低生活費非課税の原則をめぐる諸問題」

・篠原永明「同性婚と親子関係法——憲法の観点から」


法律時報 97 巻 13 号(2025)

・江島晶子・山元 一・巻 美矢紀・村西良太・栗島智明「学界回顧 憲法」


自治研究 101 巻 11 号(2025)

・高田倫子「ドイツ憲法判例研究〔293〕二〇二三年連邦選挙法の合憲性」


自治研究 101 巻 12 号(2025)

・山本響子「ドイツ憲法判例研究〔294〕第三国国民に対する所得税法上の児童手当」

2025年10月24日金曜日

第320回研究会

 • 日時:2025年11月1日(土)14時~17時 

• 会場:日本大学法学部本館141講堂(4階) 

• 報告者:神橋一彦(立教大学) 

• 報告判例:2025年1月24日第2法廷決定(Beschluss vom 24. Januar 2025 - 2 BvR 1103/24 -) 

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2025/01/rk20250124_2bvr110324.html 

• 決定要旨: 

1.欧州における司法共助関係では、「相互信頼」および「相互承認」の原則が基本とされる。このような相互信頼原則の制限は、当該人物の引き渡しがEU基本権憲章第4条の意味における非人道的または屈辱的取扱いに至るおそれがある場合に認められる。 

2.「非人道的または屈辱的取扱いの禁止」は絶対的な性格をもつため、国内裁判所による拘禁条件の審査は、表面的な不備の有無にとどまらず、拘禁の実質的条件全体を総合的に評価して行わなければならない。引き渡しに関する審理を行う裁判所は、当該人物の拘禁条件について必要な補足情報を直ちに要請しなければならない。具体的には、引き渡しを要請した加盟国に対し、どのような環境で収容されるかについての追加資料の提供を求める義務がある。 

3.裁判所は、これらの補足情報を受領して危険が存在しないことを確認するまで、引き渡しの許可決定を保留しなければならない。もし合理的な期間内にその危険を排除できない場合は、引き渡し手続を終了すべきである。 

4.ハンガリーへの刑事訴追目的での引渡し容認決定に対して、ノンバイナリーを自認する人物が提起した憲法異議申立てを認容する。 

クリップボード@月報332号

 憲法ネット 103 編『混迷する憲法政治を超えて』(有信堂、2025)

・石村修「『民意』もしくは『憲法』か」

・上脇博之「『政治とカネ』の重大問題―裏金をなくす改革の必要性」

・根森健「災害と憲法」


松井茂記編著『ジャズをかけて、スターバックスのラテを飲みながら憲法を考える-憲法学からの現代社会への論争提起』(有斐閣、2025)

・棟居快行「憲法二四条は異性婚に限定しているのか?」

・鈴木秀美「裁判のテレビ中継を認めるべきではないか?」

・赤坂正浩「デジタル社会は憲法変遷を引き起こすか?」


公法研究 86 号(2025)

・大西楠テア「人の移動と住民」

・中村安菜、宮内紀子、髙良沙哉、松本奈津希、石塚壮太郎「個別報告報告要旨」

・片桐直人、平地秀哉、三宅雄彦「学界展望 憲法」


2025年10月6日月曜日

第319回研究会

 日時:2025年10月10日(金)18時~20時 

• 会場:大阪公立大学文化交流センター 

〒530-0001 大阪市北区梅田1-2-2-600大阪駅前第2ビル6階 

*JR「大阪駅」や地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩10分 

2 年前の10月の研究会と同じ会場で、大阪公立大学梅田サテライトと同じ建物の同じ階です。 

アクセスマップ:https://www.omu.ac.jp/about/campus/umeda/ 

• 報告者:渡辺洋(神戸学院大学) 

• 報告判例:2024年4月9日の第2法廷決定(BVerfGE 169, 67; 2 BvL 2/22 – Politischer Beamte) 

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2024/04/Ls20240409_2bvl000222.html?nn=68080 

• 決定要旨: 

1. 政治的官吏を随時一時退職へと異動することができる余地は、終身任用原理(基本法 33条 5 項)を破るものとして、憲法上原則として認められるが、狭く限定された例外的な場合になお制限されていなければならない。 

2. 政治的官吏という例外的なカテゴリーの実質的正当性は、政治的官吏が、その任務の性質に応じ特別な方法で国の指導層の政治的信頼を必要とし、政府の基本的な政治的見解や目標と不断に一致した関係になければならないという点に見出される。 

3. ある官職を上述の意味で「政治的」と位置づけることがどのような場合に認められうるかは、諸々の要素にかかっている。それらの要素は、それぞれの個別事例で、トータルな観察枠組において、受任者が政府の政治的目標と持続的に一致していることが効果的な課題処理のために不可欠であるとする手がかりを提供しなければならない。 

4. ノルトライン=ヴェストファーレン州における警察署長の政治的官吏としての位置づけは、終身任用原理に対する介入であり、当該職務の特別な、事柄の性質に即した必要性では正当化されない。同職の任務の領分や同職に与えられた判断の余地、同職の組織上の立場、同職に課された州政府への助言義務の範囲その他諸々の観点は、同職を上述の意味で「政治的」であるとは証明しない。

クリップボード@月報331号

 大林啓吾編『世界の憲法本―憲法理解を深める49の本』(法律文化社、2025) 

・毛利透「ハンス・ケルゼン『純粋法学〔第2版〕』」 

・石塚壮太郎「カール・シュミット『憲法理論』」 

・生田裕也「コンラート・ヘッセ『ドイツ憲法の基本的特質』」 

・片桐直人「ぺーター・ヘーベルレ『基本法19条2項にいう基本権の本質的内容の保障〔第3版〕」 

・齋藤暁「ボード・ピエロート/ベルンハルト・シュリンク『基本権—国法Ⅱ』」 

・柴田憲司「ロベルト・アレクシー『基本権の理論』」 

・山田哲史「クリストフ・メラース『論拠としての国家〔第2版〕』」 

・辛嶋了憲「マティアス・イェシュテット/オリヴァー・レプシウス/クリストフ・メラース/クリストフ・シェーンベルガー『越境する司法』」 


長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿・小島慎司編『憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ(第8版)』(有斐閣、2025) ※執筆者多数のため、ご芳名と通しの事件番号のみ掲載させていただきます(掲載順)。 

・近藤敦(6)、毛利透(7)、實原隆志(14)、丸山敦裕(15)、武市周作(17)、押久保倫夫(19)、渡辺康行(24)、井上典之(25)、倉田原志(33)、玉蟲由樹(36)、松原光宏(38)、福岡安都子(40)、石川健治(42)、林知更(45)、嶋崎健太郎(46)、上村都(51)、門田孝(56)、西土彰一郎(61)、鈴木秀美(68)、小山剛(74)、岡田健一郎(80)、工藤達朗(83)、石塚壮太郎(88)、松本和彦(91)、宮地基(92)、栗島智明(93)、平良小百合(95)、三宅雄彦(96)、赤坂正浩(102)、村西良太(103)、高田倫子(104)、山田哲史(107)、藤井康博(118)、松本奈津希(128)、柴田憲司(131)、渡辺洋(139)、國分典子(140)、高田篤(146)、山本真敬(149)、植松健一(150)、上脇博之(154)、篠原永明(155)、本秀紀(161)、斎藤一久(166)、石川健治(173)、日野田浩行(178)、赤坂幸一(182)、高橋雅人(189)、加藤一彦(192)、上代庸平(193)、片桐直人(194)、土屋武(197)、須賀博志(199) 


辛嶋了憲「公職選挙法施行令129条4項及びその周辺に関する若干の整理」広島法学49巻1号(2025) 

辛嶋了憲「医学部入試性別等不利益取扱事件:令和5年12月25日・東京地方裁判所判決」広島法学49巻1号(2025) 


行政法研究61号(2025) 

・柴田暁史「欧州法共同体―コンセプトと実務上の転換」 

・山田哲史「基本権を中心とした法治国的覊束(1)―法律の優位と留保」 

・辛嶋了憲「基本権を中心とした法治国的覊束(2)―平等」 


Toru Mori, Versammlungsfreiheit in öffentlichen Einrichtungen. Zur Notwendigkeit der Erneuerung der Dogmatik, Die Verwaltung 58 (2025), Heft 2, S.89-105 


ジュリスト1615号(2025) 

・林知更「地方自治の本旨」と比例原則――地方公共団体への国の指示権をめぐって」 

法学教室541巻(2025) 

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第18回〕内閣と行政機関」 

法学セミナー846号(2025) 

・松本和彦・伊藤 建「FOCUS憲法Ⅵ[第3回]同性婚の法的承認─『結婚の自由をすべての人に」事件』」 


法律時報97巻11号(2025) 

・山元 一・石川健治・小畑 郁・井上武史・三牧聖子・根岸陽太・江島晶子・横大道 聡「[2025年度憲法理論研究会研究総会]平和と法をめぐる対話─「〈戦争を知らない子どもたち〉だけのこの国」を目の前にして」 


自治研究101巻10号(2025) 

・中西優美子「西サハラ領域からの農産品の輸入にかかわる共通通商政策と消費者保護(Ⅲ(9))【EU法における先決裁定手続に関する研究(64)】」  

・初宿正典・山中倫太郎訳「ドイツのラント憲法:シュレースヴィヒ=ホルシュタイン憲法(三・完)」 

・安原陽平「ドイツ憲法判例研究〔292〕連邦奨学金法決定」

2025年9月6日土曜日

第318回研究会

 • 日時:2025 年 9 月 6 日(土)13 時~18 時

• 会場:慶應義塾大学三田キャンパス大学院棟 313 教室

※大学院棟は、中庭を挟んで図書館の向かい側(西側)にある建物です。正面玄関から入って、エレベーターの右側にある廊下に進むと、その廊下の右側に 313 教室があります。

• 報告者①:上代庸平(明治学院大学)

• 報告判例:2023 年 11 月 15 日の第2法廷判決(BVerfGE 167, 86; 2 BvF 1/22 - Zweites Nachtragshaushalts-gesetz 2021)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2023/11/fs20231115_2bvf000122.html

• 判決要旨:

1. a) 自然災害又は異常な緊急状態と起債上限超過との間には、基本法 109 条 3 項 2 文及び 115 条 2 項 6文の文言要件に加えて事実上の因果関係が存在することを要する。この要件の判断については、立法者に評価及び判断の余地が認められる。

b) この評価及び判断の余地は、立法手続における説明責任に対応する。

2. a) 国家債務法における年次性原則並びに年次における期間性の適用は、自然災害及び異常な緊急状態に関する基本法 109 条 3 項 2 文及び 115 条 2 項 6 文の例外規律にも及ぶものである。

b) これらの原則は、予算立法者が独立の法人格を有しない特別財産のために起債承認を供与する形式を選択することによっても、効力を失うことはない。

3. 事前議決原則は、補正予算の編成においても原則として遵守されなければならない。したがって、補正予算案は当年末までに議会において議決されなければならない。


• 報告者②:栗島智明(埼玉大学)

• 報告判例:2025 年 6 月 25 日の第 1 法廷決定(ベルリン大学法)Beschluss des Ersten Senats vom 25.Juni 2025 - 1 BvR 368/22 (Berliner Hochschulgesetz)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2025/06/rs20250625_1bvr036822.html?nn=68080

• 決定要旨:

1. 基本法 5 条 3 項 1 文の学問の自由の保護〔の範囲〕には、学術助手に関する人事的決定および次世代の学者の助成もまた含まれる。

2. 基本法 74 条 1 項 12 号が定める「労働法」の権限により、雇用者・被用者間の法関係であって、かつ、雇用関係の期間・終了に関わる限りで公勤務被用者の法関係にまで及ぶようなものについては、包括的な立法権限が基礎づけられる。


クリップボード@月報330号

 愛敬浩二・蟻川恒正・阪口正二郎編『憲法学の領分』中島徹先生古稀記念論文集(日本評論社、2025)

・渡辺洋「彼女ら彼らの戯れが、なぜ憲法になるのか——シャピロ・社会計画論を読む」

・渡辺康行「討議理論による人権・基本権論——R・アレクシー再読」

・押久保倫夫「最低限度の生活保障と『労働する人間』像」

・山本響子「入管収容によらない退去強制のための一試論——ドイツを参照しつつ」

・石川健治「憲法 24 条の領分」

・山本真敬「いわゆる継続的妥当命令について——ドイツにおける違憲確認判決(憲法不適合宣言)の効果論の現在」


ジュリスト 1613 号(2025)

・小西葉子「通信情報の利用とサイバー通信情報監理委員会」


ジュリスト 1614 号(2025)

・片桐直人「都市公園内における宗教的施設の収去を怠る事実と政教分離原則――第二次孔子廟訴訟上告審判決(最一小判令和 7・3・17)」


法学教室 539 号(2025)

・柴田暁史「政治参加の課題」

・植松健一「海外の選挙・市民会議・請願」

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 16 回〕国会・議院の権能(2)」


法学教室 540 号(2025)

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 17 回〕行政権」


自治研究 101 巻 8 号(2025)

・中西優美子「共通外交安全保障政策(CFSP)に関する措置に対するEU司法裁判所の先決裁定を下す管轄権(Ⅰ(11))」

・初宿正典・山中倫太郎「ドイツのラント憲法:シュレースヴィヒ=ホルシュタイン憲法(一)」

・吉岡万季「障害者差別解消法に基づき喀痰吸引具の取得・保管等を請求することの可否が争われた事例」

・門田美貴「ドイツ憲法判例研究(290) 高リスクサッカー試合と警察コスト」


自治研究 101 巻 9 号(2025)

・初宿正典・山中倫太郎「ドイツのラント憲法:シュレースヴィヒ=ホルシュタイン憲法(二)」

・棟久敬「ドイツ憲法判例研究(291) 大学入学資格証明書の所見(Zeugnisbemerkungen)」

国際人権交流 428 号(2025)

・近藤敦・鈴木雅子・福山宏「特集 特別座談会 『退去強制』の議論を交わらせたい」


憲法研究 16 号(2025)

・千葉勝美/(聞き手)渡辺康行「<インタビュー>私のかかわった憲法判例と裁判官人生」

・栗島智明「短歌を愛した裁判官―可部恒雄」

・山本真敬「民主主義の前提と司法審査の役割―福田 博」

・村西良太「内閣法制局長官を逐われて最高裁へ―山本庸幸」

・岡田俊幸【書評】「渡辺康行『憲法裁判の法理』(岩波書店,2022 年)」


Toru Mori, Verfassungswandel in Japan - Begriffliche Diskussionen und Analyse der neueren Gerichtsentscheidungen, Jahrbuch des öffentlichen Rechts, N.F. 73 (2025), S.181-197


鈴木秀美「選挙戦 期間中にも各社積極報道」朝日新聞 2025 年 8 月 19 日朝刊 25 頁にコメント掲載
(電子版 8 月 16 日 ttps://www.asahi.com/articles/AST8743HTT87UTIL01PM.html?iref=pc_ss_date_article)

2025年7月5日土曜日

第317回研究会

 日時:2025 年 7 月 5 日(土)14 時~17 時

• 会場:日本大学法学部 141 講堂(本館4階)

• 報告者:山本響子(千葉大学)

• 報告判例:2022 年 6 月 28 日の第 2 法廷決定(BVerfGE 162, 277; 2 BvL 9/14, 2 BvL 10/14, 2 BvL 13/14,2 BvL 14/14 - Kindergeld für Drittstaatsangehörige)https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/06/ls20220628_2bvl000914.html

• 決定要旨:

1. 本件各手続は併合され、共通した判断を下される。

2. 2006 年 12 月 13 日の、児童手当、育児手当および扶養立替金に関する外国人の受給資格に関する法律の条文における所得税法(連邦官報 I 2915 頁)62 条 2 項 3 号 b は、基本法 3 条 1 項と相容れず、無効である。

3. 上記以外の部分についての移送は不適法である。

クリップボード@月報329号

 ジュリスト 1612 号(2025)

・植松健一「森英樹著『民主主義法学の憲法理論』」(書評)


法学教室 538 号(2025)

・片桐直人「憲法記念日に未来を不安に思う」

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 15 回〕国会・議院の権能(1)」


法律時報 97 巻 8 号

・片桐直人「【法律時評】EXPO2025」

・篠原永明「マンションの再生等に向けた新たな決議制度」


自治研究 101 巻 7 号

・前硲大志「ドイツ連邦議会における委員長の選挙/解任の合憲性」


独立行政法人経済産業研究所 ポリシー・ディスカッション・ペーパー 25-P-009(2025)

・福山宏・橋本由紀「専門的・技術的分野の在留資格の理念型と現実的変容」

2025年5月31日土曜日

第316回研究会

 • 日時:2025 年 6 月 7 日(土)14 時~17 時

• 会場:日本大学法学部 141 講堂(本館4階)

• 報告者:高田倫子(大阪公立大学)

• 報告判例:2024 年 7 月 30 日の第2法廷判決(BVerfGE 169, 236; 2 BvF 1/23 - Bundeswahlgesetz 2023)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2024/07/fs20240730_2bvf000123.html

• 判決要旨:

1.選挙法を改革する立法者の決定は、特別の条件に拘束されていない。

2.連邦選挙法 1 条 3 項ならびに 6 条 1 項および 4 項 1・2 文に規定された第 2 票による裏付け手続(Zweitstimmendeckungsverfahren)は、勝利した無所属の候補者についての正当化される例外規定の他に、異なった取扱いを基礎付けない。

3.現在の事実的および法的な諸条件の下において、5%の阻止条項が許容されることは明らかである。しかしながら、連邦選挙法 4 条 2 項 2 文 2 号における阻止条項の内容形成は、全ての範囲において必要であるとはいえない。ある政党の議員が、当該政党が考慮されるとすればもう一つの政党の議員と共同会派を形成し、両党が共同で 5%の定足数に達するような場合に、ドイツ連邦議会が活動し機能する能力を確保するために、当該政党を議席配分において考慮せずにおくことは、必要であるとはいえない。

4.立法者は、阻止条項を修正してよい。その際に、立法者は、政党の特別な政治的力を、第 2 票の結果から引き出しても、第 1 票の選挙における政党の勝利の規模から引き出してもよく、したがって阻止条項を選挙区条項によって緩和することが許される。


クリップボード@月報328号

 小西葉子『現代の諜報・捜査と憲法: 自由と安全の日独比較研究』(法律文化社、2025)


法学教室 537 号(2025)

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 14 回〕国会の組織」


法学セミナー844 号(2025)

・片桐直人・伊藤健「FOCUS 憲法Ⅵ[第1回]私人間紛争における憲法の適用—ゴルフクラブ入会拒否事件」


自治研究 101 巻 6 号(2025)

・クリティアン・ブムケ(宮村教平訳)「国家による政党助成の限界―近年の連邦憲法裁判所の判決に照らして」

・中西優美子「EU構成国間の投資協定に関する Achmea 先決裁定とドイツ連邦憲法裁判所(IV(11))【EU法における先決裁定手続に関する研究(62)】」

・村西良太「政党国庫助成の絶対的上限の引上げ」


行政法研究 60 号(2025)

・斎藤誠「機関委任事務の廃止」

・神橋一彦「厚木市議会ホームページ会議録発言掲載等請求事件―発言取消命令に対する司法審査を中心に」


公研 2025 年 5 月号(2025)

・福山宏、三好範英(対談)「移民・難民問題を一から議論するために〈対話〉」


棟居快行「国民全体での議論 重要」読売新聞 2025 年 5 月 3 日朝刊7頁

(読売新聞の憲法に関する全国世論調査の結果についてコメント)

赤坂幸一「柔軟さと同居した危うさ…明治憲法の教訓は今も」朝日新聞電子版 2025 年 5 月 5 日(連載「100 年をめぐる旅~未来のための近現代史」憲法編のインタビュー)

鈴木秀美「私が考える憲法 SNS 事業者と『共同規制』」日本経済新聞 2025 年 5 月 3 日朝刊8頁 (「憲法が問う『表現の自由』」というタイトルの特集テーマについてコメント)

同「国民の知る権利が脅かされる恐れ」朝日新聞 2025 年 5 月 14 日朝刊 24 頁

同「専門家は『知る権利への理解欠く』」産経新聞 2025 年 5 月 14 日大阪朝刊第1社会面と電子版

(ttps://www.sankei.com/article/20250513-XI4GU5PG4ZK6NGLUOTVGXOB3W4/)

(兵庫県が情報漏洩につき容疑者不詳で県警に告発状を提出したことについてコメント)

同「ほっと関西」NHK 大阪 2025 年 5 月 23 日

「“情報漏えいか„兵庫県 警察に告発状」のニュースに録画でコメント

2025年5月5日月曜日

第315回研究会

 日時:2025 年 5 月 10 日(土)14 時~17 時

• 会場:日本大学法学部 141 講堂(本館4階)

• 報告者:安原陽平(獨協大学)

• 報告判例:2024 年 9 月 23 日の第1法廷決定(1 BvL 9/21 – Bundesausbildungs-förderungsgesetz)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2024/09/ls20240923_1bvl000921.html

• 決定要旨:

1.社会国家原理(基本法 20 条 1 項)と結びついた基本法1条 1 項に基づく生存を保障するための給付に対する請求権は、自ら生存を確保できる状況にない者の人間の尊厳に値する生存を保障し、そしてそのために絶対に必要な手段に限定される。当該請求権は、基本法 12 条 1 項に基づき保障される大学での学びの実現といった特定の基本権的自由の行使が不可能となったとしても、生存を保障できる就労の開始により貧困が解消しうるあるいは避けられうる場合には、認められない。

2.基本法3条 1 項と結びついた基本法 12 条 1 項から生じる、国立大学での学びへ平等に参加する大学入学有資格者の権利は、実際に提供される教育訓練の収容能力を平等的観点から見て公正に配分することを保障する。しかしこの権利は、社会的関係から負わされている大学進学に対する障壁を除去するための国家的給付請求権を含むものではない。

3.a)財政的手段の限界ゆえに多様な任務の必要な優先付けがなされる際、民主政原理および権力分立原則(基本法 20 条 2 項、3 項)に基づき立法者に認められる幅広い形成の余地を鑑みると、社会国家原理から社会的不平等の除去のための国家的給付への主観的権利は原則的に導かれない。

b)資産のない大学入学有資格者の大学での学びを可能にすることは、他の社会的需要との関係で、社会国家原理と結びついた基本法 12 条 1 項に対応した給付請求権の承認を通じて、例外的に必要な手段を民主的に正統化された立法者による配分決定から永続的に取り上げるほど、必要不可欠であるようには思われない。

4.学歴や教育訓練歴の社会的流動性(Durchlässigkeit)という特別な意味を鑑みると、基本法 12 条 1項および社会国家原理から、教育および教育訓練の平等な機会を支援する国家の任務が生じる。この支援任務は、ある住民グループ全体(ganze Bevölkerungsgruppen)が特定の教育および職業領域への参加機会を事実上持つことができない時、客観法的な作為義務にまで密度が高まる。

クリップボード@月報327号

 渡辺康行・宍戸常寿・松本和彦・工藤達朗『憲法Ⅱ総論・統治〔第2版〕』(日本評論社、2025)

辛嶋了憲「里親移転拒否事件」廣島法学 48 巻 3 号(2025)123 頁

辛嶋了憲「令和 5 年 10 月 25 日・性同一性障害者特例法手術要件違憲大法廷決定の憲法学的意義について・補遺:正当化論証を中心に」広島法科大学院論集 21 号(2025)327 頁

入井凡乃「立法者の事後的是正義務の法的構造―ドイツの判例・学説を中心に―」慶應義塾大学大学院法学政治学論究 139 号(2023)1 頁

入井凡乃「立法者の事後的是正義務と『見直し条項』」慶応義塾大学大学院法学政治学論究 144 号(2025)1 頁


法学教室 535 号(2025)

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 12 回〕「最高機関」,「立法」,「唯一」(1)」

法学教室 536 号(2025)

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 13 回〕「最高機関」,「立法」,「唯一」(2)」


法学セミナー843 号(2025)

・木下智史・松本和彦・村西良太・片桐直人・伊藤 建「[座談会]ジェンダーをめぐる裁判動向と違憲審査の方法論」


法律時報 97 巻 5 号(2025)

・宮村教平「現代における「法律」の憲法学的意義——ドイツ公法学の観点から」


自治研究 101 巻 4 号(2025)

・中西優美子「EU 生息地指令とオオカミの保護(Ⅲ(8))」

・初宿正典・宮村教平訳「ドイツのラント憲法:ノルトライン・ヴェストファーレン憲法(一)」

・木藤茂「ドイツ憲法判例研究(286)欧州連合案件における連邦政府の連邦議会への情報提供義務(ギリシャ支援事件)」


自治研究 101 巻 5 号(2025)

・初宿正典・宮村教平訳「ドイツのラント憲法:ノルトライン=ヴェストファーレン憲法(二・完)」

・松村好恵「児童婚撲滅法違憲決定」


鈴木秀美「国民の知る権利、脅かされかねない」朝日新聞 2025 年 4 月 10 日朝刊

(「兵庫県、『文春』への情報提供も第三者委に調査依頼」の記事にコメント)

2025年3月29日土曜日

第314回研究会

 第 314 回研究会

• 日時:2025 年 4 月 5 日(土)14 時~17 時

• 会場:日本大学法学部 10 号館 1031 講堂 ※いつもの建物、教室とは異なりますのでご注意下さい。

• 報告者:棟久敬(白鷗大学)

• 報告判例:2023 年 11 月 23 日の第1法廷判決(BVerfGE 167, 239; 1 BvR 2577/15, 1 BvR 2579/15, 1BvR 2578/15 – Zeugnisbemerkungen)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2023/11/rs20231122_1bvr257715.html

• 判決要旨:

1. ある人が、通常とは異なる(regelwidrig)身体的、精神的ないしは心的な状態の結果として、個人が独立して生活を送る能力に比較的長期にわたって支障がある場合に、憲法上の意味における障害がある。軽微な支障(Beeinträchtigungen)は該当せず、重大な制限のみが該当する。

2. 基本法 3 条 3 項 2 文は、特定の障害を持つ人々を、他の障害を持つ人々に比べて不利に取扱うことにも適用される。

3. 法的な平等取扱が、典型的かつ性質や範囲に応じて、障害を理由とした予見しうる事実上の不利な取扱いをもたらす場合にも、基本法 3 条 3 項 2 文の適用領域は開かれている(BVerfGE 128,138〈156〉と関連する)。

4. 自らの能力をその社会的な出自にかかわりなく発揮して、学校卒業後に自らの能力や素質に応じて教育課程や職業を自由に選択し、そして自らの責任によって生活する基礎をつくることができる。そのような人格の持ち主(人物)へと生徒が成長することもまた、学校教育の目標である。ここには、個人のもつ潜在能力を 阻害する社会的な不利益を可能な限り取り除き、多種多様な教育を提供することで存在

する才能を呼び覚まし、支援することも含まれる。その社会的な出自にかかわりなく、おしなべて教育または職業の機会をとらえることができるような人格の持ち主(人物)へと成長しうる機会を、少なくとも生徒に開いておく教育を提供することは欠くことのできないものである(BVerfGE 159,355〈383f.Rn.50 及び 386f. Rn.57〉と関連する)。

5. (大学入学資格試験の)成績証明書(Abiturzeugnis)は、一般的な大学入学資格の証明として、生徒に付与された学校での成績や人的な能力に応じて教育や職業へアクセスしうる平等な機会をすべての生徒に開くという目標に貢献する。このような目標は、基本法 12 条 1 項及び 3 条 1 項と結びついた基本法 7 条 1 項により憲法上の地位をもつ。とりわけ、すべての受験者が同一の学校で身に着けた知識や能力を同一の条件の下で証明しなければならず、異なる成績付与により提示された成績の異なる質が正確に把握され、すべての卒業証明書において説得力があり、かつ比較しうる方法で記録される場合には、立法者はこの目標に適ったやり方をしている。

6. 記載がなければわからないような、申請に基づいて行われた、そして一般的な試験基準とは異なるような、障害に起因する制約を理由とした成績評価の除外に関する学校の卒業証明書における所見は、基本法 3 条 3 項 2 文による能力に即した機会均等な教育や職業へのアクセスを確保するため、全体として証明書の十分な透明性が達成される程度に、その所見が網羅的になされるのであれば、原則として正当化される。

7. 少なくとも、一般的な大学入学資格の証明によりすべての科目についての研究許可への原則的な請求権を成立させる成績証明書においてそのような所見を記入することは、原則として必要である。


クリップボード@月報326号

石塚壮太郎『国家目標の法理論』(尚学社、2025)


神橋一彦・櫻井智章・鵜澤剛・栗島智明『憲法と行政法の交差点』(日本評論社、2025)


Herausgegeben von Tomoaki Kurishima, Daniel Wolff und Johannes Kaspar, Individualität und Kollektivität, 2025.


法学教室 534 号(2025)

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 11 回〕選挙」


法律時報 97 巻 3 号(2025)

・片桐直人「墓地機能の維持と承継」

・高橋雅人「『ドイツのための選択肢』と国法学者協会の選択」


自治研究 101 巻 3 号(2025)

・阿部泰隆「公務員の対外的個人賠償責任の有無(四・完)」

・中西優美子「EU 復興基金(NEGU)のための固有財源決定批准法の合憲性」

2025年2月28日金曜日

第313回研究会

 第 313 回研究会

• 日時:2025 年 3 月 1 日(土)13 時~18 時

※2 名の報告があります。開始時間と終了時間にご注意ください。

• 会場:日本大学法学部本館 141 講堂

• 報告者①:前硲大志(関西学院大学)13 時~

• 報告判例:2024 年 9 月 18 日の第2法廷決定(2 BvE 1/20, 2 BvE 10/21 -Ausschussvorsitze Bundestag)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2024/09/es20240918_2bve000120.html

• 判決要旨:

1.基本法 38 条 1 項 2 文に基づく議員の特殊な身分権およびそこから導出される会派の特殊な身分権以外についても、形式的平等の原則が妥当する。ここから、平等取扱請求権が導き出される。

2.この憲法上の平等取扱請求権は、ドイツ連邦議会議事規則の公正かつ忠実な解釈適用を求める議員および会派の権利として表れる。それゆえ、ドイツ連邦議会議事規則によって付与され、基本法 38 条 1 項 2 文に基づく特殊な身分権の埒外にある参加権についても、この平等取扱請求権が――関与請求権として――及ぶ。

3.議員および会派の特殊な身分権に対する議事規則による制約は、特別な憲法上の正当化要請に服する。その制約は、憲法ランクにある他の法益の保護に資するものでなければならず、比例原則を遵守しなければならない。

4.これに対して、ドイツ連邦議事規則によって初めて付与される法的地位への関与に関する議員の形式的平等の地位だけが問題となる場合、憲法裁判所は、議事規則の当該規定またはその解釈適用が少なくとも明らかに不合理で、したがって恣意的なものか否かについてのみ審査を行う。

• 報告者②:門田美貴(京都大学)15 時 45 分~

• 報告判例:2025 年 1 月 14 日の第1法廷判決(1 BvR 548/22 „Polizeikosten Hochrisikospiele“)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2025/01/rs20250114_1bvr054822.html

• 判決要旨:

1.料金(Gebühren)とは、個人に帰責可能な給付に際し公法上の規定やその他の高権的措置によって課され、とりわけ当該給付との関連でその費用の全部または一部を補填すること、もしくは当該受益や価値に対する支払いを行うことを目的とした、公法上の現金給付として理解される。こうした料金は、反対給付の側面、すなわち利益と負担の衡量に依るものである。

2.警察による安全配慮は常に無償で提供されなければならないという一般的原則は憲法上認められない。当該安全配慮は、必ず税収入からのみ調達しなければならない一般的国家活動ではない。また、憲法上、警察コストが原因者(Störerinnenund Störern)、もしくは警察法の規定に基づいて原因者の代わりに責任を負わされうるもの、もしくは自ら違法な行いをした者のみに課すことを要請されない。

3.料金とは、実際に、個人的に帰責可能な給付に対する反対給付として実際上も徴収される場合にのみ適切なものとなる。その際、たしかに、料金法の立法者は、いかなる個人的に帰責可能な公的給付を料金支払義務のもとに置くべきかにつき、広範な決定および形成に関する裁量を有する。しかし、こうした裁量の逸脱は法律上定められた利益と公課の支払義務との間で具体的連関がもはや認められない場合にのみ逸脱したこととなる。

4.個人的・具体的帰責可能性の存在を想定することができるのは、公的給付が具体的な受益と結びついている場合や、個人的に誘発(veranlasst)され、とりわけ、限られた国家的資源を特別な使用を伴う、公物の通常の使用を超えるような「特別使用(Sondernutzung)」の場合である。

クリップボード@月報325号

羽場久美子・田中素香・中西優美子編『EU 百科事典』(丸善出版、2024 年 12 月)

石村修「緊急事態と措置権限」専修ロージャーナル 20 号(2025)

渡辺康行「同性婚訴訟の現状―札幌訴訟を中心として」行政法研究 58 号(2024)

判例時報 2573 号(2024)

・渡辺康行「夫婦同氏制違憲訴訟を振り返る―第二次夫婦同氏制違憲訴訟における三浦意見を中心として」

法学教室 533 号(2025)

・高田篤「憲法の基本原理から見る統治〔第 10 回〕政党」

法律時報 97 巻 2 号(2025)

・門田美貴「『集会の自由』に対する警察コストの徴収—憲法的統制に関する序論的考察」

・渡辺康行「憲法と家族法の交錯・2 同性婚訴訟・管見—第一次東京訴訟を手掛かりとして」

法学セミナー841 号(2025)

・村西良太「警察による無罪判決確定者の個人情報取扱いをめぐる事例分析[判例解説編]DNA 型データ抹消請求事件(名古屋地判 2022〔令 4〕・1・18 判時 2522 号 62 頁)」

自治研究 101 巻 1 号(2025 年 1 月)

・初宿正典・高田倫子訳「ドイツのラント憲法:自由ハンザ都市ハンブルク憲法(三・完)」

・小西葉子「【ドイツ憲法判例研究〔283〕】ノヴァ(新証拠)型不利益再審の違憲性」

自治研究 101 巻 2 号(2025 年 2 月)

・中西優美子「動物福祉と宗教の自由をめぐる欧州における裁判官対話(Ⅳ(10))」

・土屋武「【 ドイツ憲法判例研究〔284〕】連邦首相の発言権と政治的中立性の要請」


2025年1月9日木曜日

第312回研究会

 • 日時:2025年1月11日(土)13時~18時 

※2名の報告があります。開始時間と終了時間にご注意ください。 

• 会場:日本大学法学部本館141講堂 

• 報告者①:村西良太(大阪大学)13時~ 

• 報告判例:2023年1月24日の第2法廷判決(BVerfGE 165, 206; 2 BvF 2/18 -Parteienfinanzierung - Absolute Obergrenze) 

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2023/01/fs20230124_2bvf000218.html 

• 判決要旨: 

1. 政党国庫助成の絶対的上限と相対的上限は相補的である。相対的上限は、各々の政党が社会の中に十分に根ざすこと、そして国家による財政援助に過度に依存する事態を防ぐことを目指すのに対して、絶対的上限は、政党システム全体と関わり、とりわけ市民においてこのシステムに対する継続的な受容喪失(Akzeptanzverlust)が生じるのを防ごうとするものである。 

2. 諸事情の切実な(einschneidend)変化が認められれば、絶対的上限の引上げは正当化されうるところ、かかる変化は次のような場合にはじめて存在する。すなわちそれは、政党システム全体と関わり、政党の外部から政党に影響を及ぼし、かつ基本法21条1項1文により政党に託された任務の遂行に係る人的・物的リソースの不足を明白に(deutlich spürbar)、そして諸政党自身の力では克服できないほどに高める事情が生じた場合である。 

3. 諸事情の切実な変化が存在するとき、絶対的上限の引上げは、政党システムの機能性(Funktionsfähigkeit)を維持するうえで不可欠な限度でのみ許される。 

4. 立法者は、すでに法律制定手続の段階において、絶対的上限を引き上げるべき理由を説明しなければならない。諸事情の切実な変化が存在すること、そしてその結果として助成額の適切な変更(Anpassung)の必要があることを示すべく、顧慮された諸々のファクター(Bestimmungsfaktoren)をどのように算定し、衡量したのか、ということが根拠とともに(nachvollziebar)説明されなければならない。 

5. デジタル化の進展に伴うコミュニケーションの手段や可能性の拡大、さらに政党内部におけるさまざまな参加方式のいっそうの活用は、基本法21条1項1文によって政党に委ねられた憲法上の任務の遂行に関する、諸事情の切実な変化とみることができる。


• 報告者②:新井貴大(新潟県立大学)15時45分~ 

• 報告判例:2023 年 2 月 16 日の第 1 法廷判決(BVerfGE 165, 363; 1 BvR 1547/19 - Automatisierte Datenanalyse) https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2023/02/rs20230216_1bvr154719.html 

• 判決要旨: 

1. 保存されたデータストックが、データの分析または評価のために自動化されたアプリケーションを用いて処理される場合、こうした処理は、データがこの過程で個人に関連して使用されるすべての者の情報的自己決定(基本法1条1項と結びついた2条1項)に対する介入となる。  

2. 第一に、自動化されたデータの分析または評価についての介入の重大性と、その憲法上の正当化に対する要求が、先行するデータ取得による介入の重大性から生じる。この限りでは、目的拘束と目的変更の諸原則が適用される。第二に、自動化されたデータの分析または評価は、独自の重大性を有する。なぜなら、自動化されたデータの分析または評価を通じた追加の処理は、〔データの〕元々の取得による介入の重大性を超えた固有の負担効果をもちうるからである。この限りでは、狭義の比例性の原則から、特段の正当化の要求が生じる。 

3. 自動化されたデータの分析または評価の正当化に対するこうした特段の要求は、さまざまに異なる。これは、そうした手段に固有の介入強度が、法律上の形態に応じてまったく異なる可能性があるためである。介入の重大性は、とりわけ、処理可能なデータの種類と範囲およびデータの分析または評価に許容される方法によって規定される。立法者は、データの種類と範囲および評価方法の限定に関する規律を通じて、介入強度を制御することができる。 

4. 自動化されたデータの分析または評価によって情報的自己決定への重大な介入が可能となる場合、介入の度合いが強度となる秘密の監視措置に対して一般的に適用されるような厳密な要件を満たしたときに限り、こうした介入が正当化されうる。つまり、目的が特に重大な法益の保護にほかならず、こうした法益に対する少なくとも十分に具体化された危険が存在する場合に、上記のような介入を正当化することができる。特に重大な法益に対する少なくとも十分に具体化された危険を要求する条件は、次の場合に限り、憲法上不可欠ではない。すなわち、とりわけデータの種類と範囲を限定するための規律や、データ処理の方法を制限するための規律を通じて、許容される分析および評価の可能性が、規範として明確で、かつ十分に特定されていて、実際に、措置に伴う介入の重大性が相当程度に低下するほど厳密に限定されている場合である。 

5. 原則として、立法者は、処理可能なデータの種類と範囲および許容されるデータ処理の方法に関して必要となる規律の制定を、自身と行政とのあいだで分配することができる。しかし立法者は、法律留保を守りつつ、全体として十分な規律がなされることを確保しなければならない。 

a. 立法者は、データの種類と範囲および処理方法を限定するための本質的な根拠を、自ら、法律であらかじめ定めておかなければならない。 

b. 立法者が、組織上や技術上の細部について、より詳細な規律を行政に授権する場合、立法者は、次のことを保障しなければならない。つまり、個別事案における自動化されたデータの分析または評価の実施にとって指針となる規準と基準(Vorgaben und Kriterien)を、行政が抽象的・一般的な形式で定め、確実に文書化し、そして立法者によってより詳細に規定されるべき方法で公開することを、立法者は確保しなければならないのである。これにより、憲法上で要求される統制も確保される。この統制は、とりわけデータ保護監察官によって行われうる。 

クリップボード@月報324号

吉岡万季『憲法上の面会交流権 ― 親の権利の日独比較』(信山社、2024) 


福山宏「『ワタシ、ビョーキ』元東京入管局長が語る収容の実情 ハンストで体重増、LGBT男性も」産経新聞12月8日配信(https://www.sankei.com/article/20241208-NHIHXGBVUFHM5AXSBSPNQ425I4/) 


憲法理論研究会編『憲法問題の新展開』(敬文堂、2024) 

・松本奈津希「生活保護基準改定にかかる裁量統制のあり方と憲法25条の役割―日独の比較から」 

・柴田憲司「生存権の実現過程の「不合理」と「違法」と「違憲」の連関―生活保護基準改定をめぐる

裁判例を手掛かりに」 

・杉山有沙・小山剛「憲法具体化法としての生活保護法と裁量統制」 

・山本響子「『外国人の生存権保障』をめぐる論点整理の試み―ドイツを参照しつつ」 

・門田美貴「萎縮効果論は『感情』の保護をもたらすか?―集会のビデオ監視からの一考察」 

・小林宇宙「1930年のライヒ議会選挙制度改革案」 

・上代庸平「藤井康博『環境憲法学の基礎』」(書評) 


判例時報2599号(2024) 

・柴田憲司「自由と給付」の一局面─「群馬の森」追悼碑裁判と表現の自由─」 


法学教室532号(2025) 

・高田篤「統治機構の導入――各論の組み立てと『代表者』・『代表』」 


法律時報97巻1号(2025) 

・林知更「『憲法』と『立憲主義』の間——樋口憲法学の構造に関する一視角」 


自治研究100巻12号(2024年12月)  

・山中倫太郎「【 ドイツ憲法判例研究〔282〕】 欧州連合事務における政府の連邦議会に対する報告義務

の射程と限界」149頁