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2023年9月26日火曜日

第300回研究会

※第300回研究会では、事前に研究会・懇親会の出席確認を致しております(〆切=10月2日(月)18:00まで)。出席をされる方で、まだ提出されていない方は急ぎ月報記載のフォームからご回答ください。

研究会情報

  • 日時:2023年10月6日(金)18時~20時
  • 会場:大阪公立大学文化交流センター
    • 〒530-0001 大阪市北区梅田1-2-2-600大阪駅前第2ビル6階
    • JR「大阪駅」や地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩10分。
    • 大阪公立大学梅田サテライトと同じ建物の同じ階です。
    • アクセスマップ:https://www.omu.ac.jp/about/campus/umeda/
  • 報告者:原島啓之(関西大学)
  • 報告判例:2022年2月9日の第2法廷決定(BVerfGE 160, 284, 2 BvL 1/20 -Verbotene Kraftfahrzeugrennen)https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/02/ls20220209_2bvl000120.html

判決要旨:

  • 1a. 刑事裁判所に対して、「法律なければ刑罰なし」という命題は、基本法20条2項2文から生じる権力分立原則を具体化している。刑事裁判所は、可罰性についての立法者の決定に修正する形で介入してはならない。もっとも刑事裁判所は、文言の限界の枠内において、〔構成要件を〕厳密化する解釈によって、広義に表現された構成要件に輪郭を付与しなければならない。その際、刑事裁判所は、立法者が可罰性を限界付けるために設けた構成要件要素に、当該限界付けを破棄する仕方で平準化する解釈を加えてはならない。
  • 1b. それゆえ、個々の構成要件要素は、――たとえ規範名宛人の保護のためであっても――それらの可能な語義の枠内において、他の構成要件要素に完全に埋没するほど広く、つまり、必然的に他の構成要件要素によって一緒に実現されざるを得なくなる程に広く解釈されてはならない(構成要件要素の平準化禁止(Verbot der Verschleifung von Tatbestandsmerkmalen))。

  • 2a. 立法者に対して、基本法103条2項は、その明確性要請としての機能において、〔ある行為に〕刑罰が科されるべきか否かという本質的な問いを民主的な議会における意思形成過程のなかで解明し、可罰性の要件を、刑罰構成要件の射程および適用範囲を認識でき、解釈によって突き止めることができるほど具体的に記述する義務付けを含んでいる。
  • 2b. これに対し、基本法103条2項は、一切の構成要件要素を他の構成要件要素に埋没させないよう定式化する刑事立法者の義務をも含むものではない。立法者の評価余地・裁量余地に鑑みれば、〔可罰性を〕明確化するために立法者にとって重要な構成要件要素を明示的に法律テキストに取り入れることは、たとえそれらが相互に埋没し、それゆえ結果として「平準化させる」ものであるとしても、立法者に禁じることができない。
  • 2c. したがって、立法者がこの種の構成要件要素に構成要件を限定する機能を付与していなかった場合、裁判所によるそれらを平準化させる解釈は基本法103条2項に違反しない。
  • 2d. それゆえ、基本法103条2項から導出される平準化禁止は、専ら法適用のレベルにのみ関係する。法定立のレベルにおいて、平準化禁止は、立法者が構成要件のなかで使用した諸概念によって生み出される可罰性の限界付けが裁判所による広い解釈によって抹消されるのを防止するという目標を、達成することができない。明確性要請の諸要求を満たすためには、立法者が刑罰規範を、規範名宛人が一般的な基準に従うことによって当該刑罰構成要件の射程および適用範囲を突き止めることができるように表現していれば十分である。
  • 2e. ここまで述べられた諸基準は、基本権の内容および射程を定めるための解釈の補助として援用されるべき欧州人権条約7条の明快性・明確性の要請の顧慮の下でも妥当する。これらの要請は、基本法103条2項の保障内容を越えるものではない。

  • 3. 刑法315d条1項3号は合憲である。この規範はとりわけ、基本法103条2項の明確性要請に適合している。
  • 3a. 刑法315d条1項3号は、〔同規定によって〕把握された道路交通、生命、身体の不可侵性および財産の安全という法益を、立法者がこれらの法益をそこから保護しようとするところの特別の危険と同様に明らかにしている。
  •  とりわけ、立法者が新たに導入した「最大限度の速度(höchstmögliche Geschwindigkeit)」という概念は、その語義の枠内において、方法論上正当な形で解釈されうる。
  • 3b. 〔最大限度の速度に到達するためという〕意図の要素が、未だ刑罰は科されないものの、規範に完全には適合せず、あるいは配慮が十分とはいえない恐れのある道路交通上の行為との境界付けに着目した場合に、依然として周縁部分に不鮮明さを含んでいる点について、この要素は、語義の枠内での裁判権による厳密化を受け入れるものである。〔この構成要件要素を満たすためには〕行為者の目標設定が、行為者自身の観念によれば交通の安全という観点の下で全く些細であるとはいえない区間と結び付いていなければならず、空間的に狭く限定された範囲での交通事象の処理だけに尽きるものであってはならないという、連邦通常裁判所による刑法315d条1項3号の解釈は、可能であり、かつ、方法論上正当な解釈である。この解釈は、刑法315d条1項3号の文言と両立するものであり、認識可能な立法目的と矛盾しない合理的な意義を同規定に残している。
  • 3c. かかる刑法315d条1項3号の刑罰構成要件の解釈は、立法者が〔可罰性の〕限界付けとして理解した構成要件要素の平準化を帰結しない。この解釈はとりわけ、意図の必要性が他の構成要件要素の定義のなかに埋没してはならないことを顧慮している。このことは、「不適切な速度(nicht angepasste Geschwindigkeit)」および「著しい交通法規違反(grobe Verkerhswidrigkeit)」という2つの客観的な構成要件要素について、すでに次の理由からして当てはまる。すなわち、意図の必要性は、これら2つの客観的な構成要件要素のために要求される未必の故意という故意の形式を超えるものだからである。

  • 4. 権力分立原則(基本法20条3項)および一般的行為自由(基本法2条1項)も、刑法315d条1項3号が合憲であることと矛盾しない。