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2023年12月31日日曜日

第303回研究会(2024/01/02 22:45修正)

日時:2024年1月6日(土)15時~18時

※報告者のご都合で開始時刻・終了時刻ともに1時間遅らせることになりました。(2024/01/02 22:45修正) 

会場:慶應義塾大学三田キャンパス南校舎436教室(正門正面の建物3階)

キャンパスマップはこちら:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html(4番の建物)

報告者:岡田俊幸(日本大学)

報告判例:2022年1月18日の第1法廷第1部会決定(NJW 2022, 844; 1 BvR 1565/21, 1 BvR 2058 /21, 1 BvR 2057/21, 1 BvR 2056/21, 1 BvR 2055/21, 1 BvR 2054/21, 1 BvR 2575/21, 1 BvR 2574/21, 1 BvR 1936/21, 1 BvR 1669/21, 1 BvR 1566/21 - Reduktionspfades für Treibhausgase)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/01/rk20220118_1bvr156521.html


決定要旨:

近い将来の一定の期間まで排出することが許されるCO₂総量を定める規制が後続の時期に対して制約類似の事前作用を発生させる場合、異議申立人は、憲法異議の訴えによって、この規制を攻撃することができる。制約類似の事前作用は、各々の立法者が、全体としてなお許容可能なCO₂排出に関する大まかに認識できるバジェットに拘束されていることを要件としている。加えて、異議申立人は、原則として、現在において許容されているCO₂排出の全体に向けられなければならないのであり、たんに国の個別的な作為又は不作為に向けるものであってはならない。各州については、CO₂残余バジェットを少なくとも大まかに認識できるような削減基準は、現在のところ、存在しない。


クリップボード@月報第314号

赤坂幸一・大河内美紀・宍戸常寿・西村裕一・林知更・山本龍彦『日本国憲法のアイデンティティ』(有斐閣、2023年11月)

石村修「文化国家と自治体」専修ロージャナル19号(2023年12月)

岡田健一郎「『ビジネスと人権に関する指導原則』は日本の憲法論にどのような影響を与えるか」一橋法学22巻3号(2023.11)

小林宇宙「1926年のライヒ議会選挙制度改革」一橋法学22巻2号(2023年7月)

柴田憲司「憲法事例分析の技法〔第22回〕同性婚と憲法上の権利・平等・制度」法学教室520号(2023年12月)

毛利透「ロールズとハーバーマスにおける宗教と政治」苅部直・瀧井一博・梅田百合香編著『宗教・抗争・政治—主権国家の始原と現在』(千倉書房、2023年12月)

自治研究100巻1号(2023年1月)

  • 阿部泰隆「行政権と司法権の癒着、裁判の公正を害する三権分立違反の腐敗(一)」
  • ヨハネス・ブーフハイム/栗島智明・巽智彦訳「行政法におけるアクチオ的思考(上)」
  • 初宿正典宮村教平訳「ドイツのラント憲法:ザールラント憲法(三・完)」
  • 中西優美子「【EU法における先決裁定手続に関する研究(55)】オーフス条約九条三項及びEU基本権憲章四七条によるEU構成国における司法アクセスの保障(V(8))」
  • 門田美貴「ドイツ憲法判例研究〔272〕新たに出訴期間を開始させる「介入」としての情報機関から警察への情報提供」


2023年11月25日土曜日

第302回研究会

日時:2023年12月2日(土)14時~17時 

会場:日本大学法学部本館141講堂

報告者:岡田健一郎(高知大学)

報告判例:2021年6月8日の第1法廷決定(BVerfGE 158, 170: 1 BvR 2771/18 - (IT-Sicherheitslücken ITセキュリティ脆弱性

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2021/06/rs20210608_1bvr277118.html


判決要旨:

  1. 基本法10条1項は防御権を根拠づけることと並んで、通信の秘密に該当するコミュニケーションに対する第三者による侵害からの保護の国家への委託を根拠づけている。
  2. a)ITシステムの機密性と完全性に関する基本権上の保障は、国家に対し、システムに対する第三者による攻撃からの保護に寄与することを義務づける。
    b)国家の基本権保護義務はまた、一方で未知の脆弱性を用いた第三者による攻撃からITシステムを保護すること、他方で危険防除に役立つ端末通信傍受を可能にするそのような脆弱性を開いておくこと、という諸目的の衝突を基本権適合的に解消するための調整も国家に要求する。
  3. 立法上の保護義務の違反を主張するためには、特別な主張責任が存在する。そのような憲法異議は、法律上の調整関係を全体的に把握しなければならない。そこには、異議を申し立てられている規範の集合体の調整について説明し、それらが総じて〔ITシステムを〕憲法上不十分にしか保護していない理由を根拠づけることが含まれている。
  4. 憲法異議が法律に直接向けられている場合は、補完性の原則に従い、行政裁判上の確認の訴えもしくは差止めの訴えの提起も今回の法的手段〔憲法異議〕の前に必要である。このことは以下の場合には必要ない、すなわち、ある規範の評価のみが特定的に憲法上の問題を惹起しており、そして、先行する専門裁判所の審査によってより良い判決の基礎が提供されることが期待されない場合には。このことはまた、立法上の保儀義務違反に対する異議申立の場合でも同様である。


クリップボード@月報第313号

玉蟲由樹「判例クローズアップ・市庁舎前『広場』での集会規制」法学教室518号(2023年10月)

Mitsuhiro MATSUBARA, Staat und Verfassung - Ein Vergleich Japan-Deutschland, JöR 2023, S. 187-207

法学セミナー827号(2023年11月)

  • 神橋一彦「憲法と行政法の交差点【第21回】防衛作用の特殊性と行政法」
  • 實原隆志「マイナンバー制度とは?」

自治研究99巻11号(2023年11月)

  • 初宿正典・宮村教平「ドイツのラント憲法:ザールラント憲法(1)」
  • 波多江悟史「ドイツ憲法判例研究(270)州による放送財源州際協定締結拒否の合憲性」


2023年11月1日水曜日

第301回研究会

  • 日時:2023年11月4日(土)14時~17時
  • 会場:慶應義塾大学三田キャンパス411教室
*日大が学園祭のため11月の会場は慶大です。
キャンパスマップはこちら:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html (キャンパスマップ4番の建物)
  • 報告者:石塚壮太郎(日本大学)
  • 報告判例:2022年10月19日の第1法廷決定(BVerfGE 163, 254; 1 BvL 3/21 – Sonderbedarfsstufe 庇護申請者給付法における特別需要等級)
    https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/10/ls20221019_1bvl000321.html
  • 判決要旨:
    1. 基本法1条1項から生じる人間に値する生存最低限の保障のための客観的義務は、困窮状況で物質的な支援を得る給付請求権に対応する。その請求権は、人間に値する生存の確保のために絶対的に必要な手段に及ぶ。この社会的給付は、継続的に現実適合的に算定されなければならず、それにより確保されるのは、人間に値する生存への配慮が実際になされることである。それらの給付は、需要がすでに他の方法で充足され、それゆえ給付が生存確保のために不要であるという推測に基づくことのみによって、またこのことが具体的な状況において十分に主張可能であることなしには、一律に減額されえない。
    2. 基本法は、人間に値する生存の確保のための社会的給付の投入を、後置原則と結びつけることを妨げない。したがって、要扶助性の克服に自ら積極的に協力することや、困窮性にそもそも陥らないようにすることを求める立法者の決定と、基本法は矛盾しない。立法者は原則として、生存確保のための給付の受給を、困窮性を直接に回避または緩和するのに適合的で必要で相当な――実際に使える――手段を用いる責務の充足と結びつけることができる。しかし、生存確保のための給付の一律の減額がそのような責務に基づきうるのは、それらの責務が実際に満たされることができ、それによりこの範囲での需要が証明可能な形で充足される場合のみである。

クリップボード@月報第312号

笹田栄司『裁判制度のパラダイムシフトⅠ』(判例時報社、2023.10)

片桐直人「FOCUS憲法Ⅳ【第6回】将来にわたる環境保全を目的とする職業制約と損失補償[問題解説編]――経済的自由をめぐる憲法思考」法学セミナー826号(2023.10)

柴田憲司「憲法事例分析の技法〔第19回〕水資源の保持のための採石の禁止と財産権」法学教室517号(2023.9)

自治研究99巻10号(2023.9)
  • 阿部泰隆「司法制度改革失敗の原因と司法の蘇生策(三・完)」
  • 中西優美子「【EU法における先決裁定手続に関する研究】EUにおける気候訴訟と原告適格(I(10))」
  • 山本真敬「【ドイツ憲法判例研究269】バイエルン憲法擁護法判決」

2023年9月26日火曜日

第300回研究会

※第300回研究会では、事前に研究会・懇親会の出席確認を致しております(〆切=10月2日(月)18:00まで)。出席をされる方で、まだ提出されていない方は急ぎ月報記載のフォームからご回答ください。

研究会情報

  • 日時:2023年10月6日(金)18時~20時
  • 会場:大阪公立大学文化交流センター
    • 〒530-0001 大阪市北区梅田1-2-2-600大阪駅前第2ビル6階
    • JR「大阪駅」や地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩10分。
    • 大阪公立大学梅田サテライトと同じ建物の同じ階です。
    • アクセスマップ:https://www.omu.ac.jp/about/campus/umeda/
  • 報告者:原島啓之(関西大学)
  • 報告判例:2022年2月9日の第2法廷決定(BVerfGE 160, 284, 2 BvL 1/20 -Verbotene Kraftfahrzeugrennen)https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/02/ls20220209_2bvl000120.html

判決要旨:

  • 1a. 刑事裁判所に対して、「法律なければ刑罰なし」という命題は、基本法20条2項2文から生じる権力分立原則を具体化している。刑事裁判所は、可罰性についての立法者の決定に修正する形で介入してはならない。もっとも刑事裁判所は、文言の限界の枠内において、〔構成要件を〕厳密化する解釈によって、広義に表現された構成要件に輪郭を付与しなければならない。その際、刑事裁判所は、立法者が可罰性を限界付けるために設けた構成要件要素に、当該限界付けを破棄する仕方で平準化する解釈を加えてはならない。
  • 1b. それゆえ、個々の構成要件要素は、――たとえ規範名宛人の保護のためであっても――それらの可能な語義の枠内において、他の構成要件要素に完全に埋没するほど広く、つまり、必然的に他の構成要件要素によって一緒に実現されざるを得なくなる程に広く解釈されてはならない(構成要件要素の平準化禁止(Verbot der Verschleifung von Tatbestandsmerkmalen))。

  • 2a. 立法者に対して、基本法103条2項は、その明確性要請としての機能において、〔ある行為に〕刑罰が科されるべきか否かという本質的な問いを民主的な議会における意思形成過程のなかで解明し、可罰性の要件を、刑罰構成要件の射程および適用範囲を認識でき、解釈によって突き止めることができるほど具体的に記述する義務付けを含んでいる。
  • 2b. これに対し、基本法103条2項は、一切の構成要件要素を他の構成要件要素に埋没させないよう定式化する刑事立法者の義務をも含むものではない。立法者の評価余地・裁量余地に鑑みれば、〔可罰性を〕明確化するために立法者にとって重要な構成要件要素を明示的に法律テキストに取り入れることは、たとえそれらが相互に埋没し、それゆえ結果として「平準化させる」ものであるとしても、立法者に禁じることができない。
  • 2c. したがって、立法者がこの種の構成要件要素に構成要件を限定する機能を付与していなかった場合、裁判所によるそれらを平準化させる解釈は基本法103条2項に違反しない。
  • 2d. それゆえ、基本法103条2項から導出される平準化禁止は、専ら法適用のレベルにのみ関係する。法定立のレベルにおいて、平準化禁止は、立法者が構成要件のなかで使用した諸概念によって生み出される可罰性の限界付けが裁判所による広い解釈によって抹消されるのを防止するという目標を、達成することができない。明確性要請の諸要求を満たすためには、立法者が刑罰規範を、規範名宛人が一般的な基準に従うことによって当該刑罰構成要件の射程および適用範囲を突き止めることができるように表現していれば十分である。
  • 2e. ここまで述べられた諸基準は、基本権の内容および射程を定めるための解釈の補助として援用されるべき欧州人権条約7条の明快性・明確性の要請の顧慮の下でも妥当する。これらの要請は、基本法103条2項の保障内容を越えるものではない。

  • 3. 刑法315d条1項3号は合憲である。この規範はとりわけ、基本法103条2項の明確性要請に適合している。
  • 3a. 刑法315d条1項3号は、〔同規定によって〕把握された道路交通、生命、身体の不可侵性および財産の安全という法益を、立法者がこれらの法益をそこから保護しようとするところの特別の危険と同様に明らかにしている。
  •  とりわけ、立法者が新たに導入した「最大限度の速度(höchstmögliche Geschwindigkeit)」という概念は、その語義の枠内において、方法論上正当な形で解釈されうる。
  • 3b. 〔最大限度の速度に到達するためという〕意図の要素が、未だ刑罰は科されないものの、規範に完全には適合せず、あるいは配慮が十分とはいえない恐れのある道路交通上の行為との境界付けに着目した場合に、依然として周縁部分に不鮮明さを含んでいる点について、この要素は、語義の枠内での裁判権による厳密化を受け入れるものである。〔この構成要件要素を満たすためには〕行為者の目標設定が、行為者自身の観念によれば交通の安全という観点の下で全く些細であるとはいえない区間と結び付いていなければならず、空間的に狭く限定された範囲での交通事象の処理だけに尽きるものであってはならないという、連邦通常裁判所による刑法315d条1項3号の解釈は、可能であり、かつ、方法論上正当な解釈である。この解釈は、刑法315d条1項3号の文言と両立するものであり、認識可能な立法目的と矛盾しない合理的な意義を同規定に残している。
  • 3c. かかる刑法315d条1項3号の刑罰構成要件の解釈は、立法者が〔可罰性の〕限界付けとして理解した構成要件要素の平準化を帰結しない。この解釈はとりわけ、意図の必要性が他の構成要件要素の定義のなかに埋没してはならないことを顧慮している。このことは、「不適切な速度(nicht angepasste Geschwindigkeit)」および「著しい交通法規違反(grobe Verkerhswidrigkeit)」という2つの客観的な構成要件要素について、すでに次の理由からして当てはまる。すなわち、意図の必要性は、これら2つの客観的な構成要件要素のために要求される未必の故意という故意の形式を超えるものだからである。

  • 4. 権力分立原則(基本法20条3項)および一般的行為自由(基本法2条1項)も、刑法315d条1項3号が合憲であることと矛盾しない。