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2023年11月25日土曜日

第302回研究会

日時:2023年12月2日(土)14時~17時 

会場:日本大学法学部本館141講堂

報告者:岡田健一郎(高知大学)

報告判例:2021年6月8日の第1法廷決定(BVerfGE 158, 170: 1 BvR 2771/18 - (IT-Sicherheitslücken ITセキュリティ脆弱性

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2021/06/rs20210608_1bvr277118.html


判決要旨:

  1. 基本法10条1項は防御権を根拠づけることと並んで、通信の秘密に該当するコミュニケーションに対する第三者による侵害からの保護の国家への委託を根拠づけている。
  2. a)ITシステムの機密性と完全性に関する基本権上の保障は、国家に対し、システムに対する第三者による攻撃からの保護に寄与することを義務づける。
    b)国家の基本権保護義務はまた、一方で未知の脆弱性を用いた第三者による攻撃からITシステムを保護すること、他方で危険防除に役立つ端末通信傍受を可能にするそのような脆弱性を開いておくこと、という諸目的の衝突を基本権適合的に解消するための調整も国家に要求する。
  3. 立法上の保護義務の違反を主張するためには、特別な主張責任が存在する。そのような憲法異議は、法律上の調整関係を全体的に把握しなければならない。そこには、異議を申し立てられている規範の集合体の調整について説明し、それらが総じて〔ITシステムを〕憲法上不十分にしか保護していない理由を根拠づけることが含まれている。
  4. 憲法異議が法律に直接向けられている場合は、補完性の原則に従い、行政裁判上の確認の訴えもしくは差止めの訴えの提起も今回の法的手段〔憲法異議〕の前に必要である。このことは以下の場合には必要ない、すなわち、ある規範の評価のみが特定的に憲法上の問題を惹起しており、そして、先行する専門裁判所の審査によってより良い判決の基礎が提供されることが期待されない場合には。このことはまた、立法上の保儀義務違反に対する異議申立の場合でも同様である。


クリップボード@月報第313号

玉蟲由樹「判例クローズアップ・市庁舎前『広場』での集会規制」法学教室518号(2023年10月)

Mitsuhiro MATSUBARA, Staat und Verfassung - Ein Vergleich Japan-Deutschland, JöR 2023, S. 187-207

法学セミナー827号(2023年11月)

  • 神橋一彦「憲法と行政法の交差点【第21回】防衛作用の特殊性と行政法」
  • 實原隆志「マイナンバー制度とは?」

自治研究99巻11号(2023年11月)

  • 初宿正典・宮村教平「ドイツのラント憲法:ザールラント憲法(1)」
  • 波多江悟史「ドイツ憲法判例研究(270)州による放送財源州際協定締結拒否の合憲性」


2023年11月1日水曜日

第301回研究会

  • 日時:2023年11月4日(土)14時~17時
  • 会場:慶應義塾大学三田キャンパス411教室
*日大が学園祭のため11月の会場は慶大です。
キャンパスマップはこちら:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html (キャンパスマップ4番の建物)
  • 報告者:石塚壮太郎(日本大学)
  • 報告判例:2022年10月19日の第1法廷決定(BVerfGE 163, 254; 1 BvL 3/21 – Sonderbedarfsstufe 庇護申請者給付法における特別需要等級)
    https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/10/ls20221019_1bvl000321.html
  • 判決要旨:
    1. 基本法1条1項から生じる人間に値する生存最低限の保障のための客観的義務は、困窮状況で物質的な支援を得る給付請求権に対応する。その請求権は、人間に値する生存の確保のために絶対的に必要な手段に及ぶ。この社会的給付は、継続的に現実適合的に算定されなければならず、それにより確保されるのは、人間に値する生存への配慮が実際になされることである。それらの給付は、需要がすでに他の方法で充足され、それゆえ給付が生存確保のために不要であるという推測に基づくことのみによって、またこのことが具体的な状況において十分に主張可能であることなしには、一律に減額されえない。
    2. 基本法は、人間に値する生存の確保のための社会的給付の投入を、後置原則と結びつけることを妨げない。したがって、要扶助性の克服に自ら積極的に協力することや、困窮性にそもそも陥らないようにすることを求める立法者の決定と、基本法は矛盾しない。立法者は原則として、生存確保のための給付の受給を、困窮性を直接に回避または緩和するのに適合的で必要で相当な――実際に使える――手段を用いる責務の充足と結びつけることができる。しかし、生存確保のための給付の一律の減額がそのような責務に基づきうるのは、それらの責務が実際に満たされることができ、それによりこの範囲での需要が証明可能な形で充足される場合のみである。

クリップボード@月報第312号

笹田栄司『裁判制度のパラダイムシフトⅠ』(判例時報社、2023.10)

片桐直人「FOCUS憲法Ⅳ【第6回】将来にわたる環境保全を目的とする職業制約と損失補償[問題解説編]――経済的自由をめぐる憲法思考」法学セミナー826号(2023.10)

柴田憲司「憲法事例分析の技法〔第19回〕水資源の保持のための採石の禁止と財産権」法学教室517号(2023.9)

自治研究99巻10号(2023.9)
  • 阿部泰隆「司法制度改革失敗の原因と司法の蘇生策(三・完)」
  • 中西優美子「【EU法における先決裁定手続に関する研究】EUにおける気候訴訟と原告適格(I(10))」
  • 山本真敬「【ドイツ憲法判例研究269】バイエルン憲法擁護法判決」

2023年9月26日火曜日

第300回研究会

※第300回研究会では、事前に研究会・懇親会の出席確認を致しております(〆切=10月2日(月)18:00まで)。出席をされる方で、まだ提出されていない方は急ぎ月報記載のフォームからご回答ください。

研究会情報

  • 日時:2023年10月6日(金)18時~20時
  • 会場:大阪公立大学文化交流センター
    • 〒530-0001 大阪市北区梅田1-2-2-600大阪駅前第2ビル6階
    • JR「大阪駅」や地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩10分。
    • 大阪公立大学梅田サテライトと同じ建物の同じ階です。
    • アクセスマップ:https://www.omu.ac.jp/about/campus/umeda/
  • 報告者:原島啓之(関西大学)
  • 報告判例:2022年2月9日の第2法廷決定(BVerfGE 160, 284, 2 BvL 1/20 -Verbotene Kraftfahrzeugrennen)https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/02/ls20220209_2bvl000120.html

判決要旨:

  • 1a. 刑事裁判所に対して、「法律なければ刑罰なし」という命題は、基本法20条2項2文から生じる権力分立原則を具体化している。刑事裁判所は、可罰性についての立法者の決定に修正する形で介入してはならない。もっとも刑事裁判所は、文言の限界の枠内において、〔構成要件を〕厳密化する解釈によって、広義に表現された構成要件に輪郭を付与しなければならない。その際、刑事裁判所は、立法者が可罰性を限界付けるために設けた構成要件要素に、当該限界付けを破棄する仕方で平準化する解釈を加えてはならない。
  • 1b. それゆえ、個々の構成要件要素は、――たとえ規範名宛人の保護のためであっても――それらの可能な語義の枠内において、他の構成要件要素に完全に埋没するほど広く、つまり、必然的に他の構成要件要素によって一緒に実現されざるを得なくなる程に広く解釈されてはならない(構成要件要素の平準化禁止(Verbot der Verschleifung von Tatbestandsmerkmalen))。

  • 2a. 立法者に対して、基本法103条2項は、その明確性要請としての機能において、〔ある行為に〕刑罰が科されるべきか否かという本質的な問いを民主的な議会における意思形成過程のなかで解明し、可罰性の要件を、刑罰構成要件の射程および適用範囲を認識でき、解釈によって突き止めることができるほど具体的に記述する義務付けを含んでいる。
  • 2b. これに対し、基本法103条2項は、一切の構成要件要素を他の構成要件要素に埋没させないよう定式化する刑事立法者の義務をも含むものではない。立法者の評価余地・裁量余地に鑑みれば、〔可罰性を〕明確化するために立法者にとって重要な構成要件要素を明示的に法律テキストに取り入れることは、たとえそれらが相互に埋没し、それゆえ結果として「平準化させる」ものであるとしても、立法者に禁じることができない。
  • 2c. したがって、立法者がこの種の構成要件要素に構成要件を限定する機能を付与していなかった場合、裁判所によるそれらを平準化させる解釈は基本法103条2項に違反しない。
  • 2d. それゆえ、基本法103条2項から導出される平準化禁止は、専ら法適用のレベルにのみ関係する。法定立のレベルにおいて、平準化禁止は、立法者が構成要件のなかで使用した諸概念によって生み出される可罰性の限界付けが裁判所による広い解釈によって抹消されるのを防止するという目標を、達成することができない。明確性要請の諸要求を満たすためには、立法者が刑罰規範を、規範名宛人が一般的な基準に従うことによって当該刑罰構成要件の射程および適用範囲を突き止めることができるように表現していれば十分である。
  • 2e. ここまで述べられた諸基準は、基本権の内容および射程を定めるための解釈の補助として援用されるべき欧州人権条約7条の明快性・明確性の要請の顧慮の下でも妥当する。これらの要請は、基本法103条2項の保障内容を越えるものではない。

  • 3. 刑法315d条1項3号は合憲である。この規範はとりわけ、基本法103条2項の明確性要請に適合している。
  • 3a. 刑法315d条1項3号は、〔同規定によって〕把握された道路交通、生命、身体の不可侵性および財産の安全という法益を、立法者がこれらの法益をそこから保護しようとするところの特別の危険と同様に明らかにしている。
  •  とりわけ、立法者が新たに導入した「最大限度の速度(höchstmögliche Geschwindigkeit)」という概念は、その語義の枠内において、方法論上正当な形で解釈されうる。
  • 3b. 〔最大限度の速度に到達するためという〕意図の要素が、未だ刑罰は科されないものの、規範に完全には適合せず、あるいは配慮が十分とはいえない恐れのある道路交通上の行為との境界付けに着目した場合に、依然として周縁部分に不鮮明さを含んでいる点について、この要素は、語義の枠内での裁判権による厳密化を受け入れるものである。〔この構成要件要素を満たすためには〕行為者の目標設定が、行為者自身の観念によれば交通の安全という観点の下で全く些細であるとはいえない区間と結び付いていなければならず、空間的に狭く限定された範囲での交通事象の処理だけに尽きるものであってはならないという、連邦通常裁判所による刑法315d条1項3号の解釈は、可能であり、かつ、方法論上正当な解釈である。この解釈は、刑法315d条1項3号の文言と両立するものであり、認識可能な立法目的と矛盾しない合理的な意義を同規定に残している。
  • 3c. かかる刑法315d条1項3号の刑罰構成要件の解釈は、立法者が〔可罰性の〕限界付けとして理解した構成要件要素の平準化を帰結しない。この解釈はとりわけ、意図の必要性が他の構成要件要素の定義のなかに埋没してはならないことを顧慮している。このことは、「不適切な速度(nicht angepasste Geschwindigkeit)」および「著しい交通法規違反(grobe Verkerhswidrigkeit)」という2つの客観的な構成要件要素について、すでに次の理由からして当てはまる。すなわち、意図の必要性は、これら2つの客観的な構成要件要素のために要求される未必の故意という故意の形式を超えるものだからである。

  • 4. 権力分立原則(基本法20条3項)および一般的行為自由(基本法2条1項)も、刑法315d条1項3号が合憲であることと矛盾しない。

クリップボード@月報第311号

青井未帆/新井誠/尾形健/村山健太郎編著『現代憲法学の理論と課題―野坂泰司先生古稀記念』(信山社、2023年9月)
  • 渡辺康行「5 違憲審査の正当性と〈社会通念〉ないし〈コンセンサス〉・再考」
  • 棟居快行「9 プライバシー権・応用編―二つの「意見書」」
  • 小山剛「10 憲法上の個人情報保護についての基本的な考え方」
  • 工藤達朗「15 基本権の通用範囲と在外外国人」
  • 赤坂正浩「18 議会統治制の観念」
  • 毛利透「19 公職選挙法が定める事前運動禁止の違憲性」

石村修・稲正樹・植野妙実子・永山茂樹編『世界と日本のCOVIDー19対応』(敬文堂、2023年7月)
  • 石村修「ドイツにおけるCOVIDー19」
  • 根森健「日本のコロナ対策立法と立憲主義」

出入国管理法令研究会編(多賀谷一照・髙宅茂・福山宏)『外国人の入国・在留資格案内 実務のポイントと立証資料』(日本加除出版社、2023年10月刊行予定)

水島朝穂『憲法の動態的探究—「規範」の実証』(日本評論社、2023年8月)

福山宏・橋本由紀「外国人研修・技能実習制度の政策史―成立から定着まで 」経済産業研究所ポリシー・ディスカッション・ペーパー2023年9月(連載予定)(https://www.rieti.go.jp/jp/publications/pdp/23p019.pdf 一般公開)

林知更「法をめぐるミスコミュニケーション・5-1 『政治』という他者(上)——憲法学から見た「法のミスコミュニケーション」法律時報95巻10号(2023年8月)


自治研究99巻9号(2023年8月)
  • 阿部泰隆「司法改革失敗の原因と司法の蘇生策(2)」自治研究99巻9号(2023年8月)
  • 中西優美子「「【ドイツ憲法判例研究 268】EU及びEU構成国とカナダ間の包括的経済貿易協定(CETA)に関する憲法異議及び機関訴訟」

2023年8月26日土曜日

第299回研究会

日時:2023年9月2日(土)13時~18時 *2名の報告があります。開始・終了時間にご注意下さい

会場:日本大学法学部本館171講堂

報告者①:棟久敬(秋田大学) 13時~15時30分(予定)

報告判例:連邦憲法裁判所2021年11月19日第一法廷決定(1 BvR 971/21, 1 BVR 1069/21)https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2021/11/rs20211119_1bvr097121.html

判決要旨

1. 基本法7条1項と結びついた2条1項から、共同体においても自らの責任を自覚した人格への発展を学校教育により支援及び促進する子ども及び青少年の国家に対する権利(学校教育への権利)が導き出される。

2. 学校教育への権利は異なった保障の側面を含む。

a) この権利は、自らの責任を自覚した人格を等しい機会のもとで発展させるために不可欠な最低限度の教育を提供するよう順守を求める権利を子ども及び青少年に与えるものではあるが、国家の学校の特定の形態に対する元来の給付請求権を含むものではない。

b) さらに、学校教育への権利からは、現存の学校制度の枠内で国家による教育の提供への平等なアクセスへの権利が導き出される。

c) 学校教育への権利は、現在開放され維持されている学校が提供する教育を、基本法7条1項の形成において作り出された学校制度そのものを変更することなく制限する措置に対する防御権をも含む。

3. 学校での対面授業が主に感染症を撲滅するという理由で長期間行われない場合、ラントは基本法7条1項により、子ども及び青少年の人格の発展のために不可欠な最低限度の学校教育を可能な限り保持するよう義務づけられる。ラントは、対面授業が禁止されている際には可能な限り遠隔授業を行うよう配慮しなければならない。

4. コロナパンデミックのように長期間にわたり危険な状況が継続している際には、立法者は、危機を撲滅するためにとられる負担をかける措置が長期にわたって持続するほど、その決定をより支える評価を基礎としなければならない。しかし、国家は結局のところ、身体や生命にとっての大きな危険を甘受することはない。というのも、国家は、こうした危険を防止するための自由にとって寛大な選択肢が探究されてきたことに十分には寄与してこなかったからである。

5. 基本法104a条4項所定の連邦参議会の同意権を発動させる、第三者に対する金銭給付、金銭価値のある現物給付またはそれに匹敵する役務給付をなすべきラントの連邦法律上の義務が存在するのは、法律が客観的な規制内容により、第三者に国家給付により個別の利益を得させることを目指す場合のみである。


報告者②:平良小百合(一橋大学) 15時30分~18時(予定)

報告判例:2022年12月14日第2法廷決定2 BvL7/13, 2 BvL 18/14 - Vororganschaftliche Mehrabführungen (機関関係制度以前の超過供出)https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/12/ls20221214_2bvl000713.html

判決要旨
2004年12月9日の国税法におけるEU指令の実施及びその他の諸規定の改正のための法律(BGBl.ⅠSeite 3310)の形式における法人税法34条1項及び9項4号は、それらの規定が、2004年12月9日の国税法におけるEU指令の実施及びその他の諸規定の改正のための法律(BGBl.ⅠSeite 3310)の形式における法人税法14条3項を機関会社に以下に関して適用する限りで、基本法2条1項と結びついた20条3項の信頼保護原則に違反しており無効である。

1. 2003年3月5日から2004年8月13日の間に締結された利益供出契約に基づいて2007年1月1日以前になされた機関会社から機関主体への超過供出、

2. 2003年3月5日以前に締結された利益供出契約に基づいて、

a) 2003年3月4日以降の利益供与契約が遅くとも2003年12月31日までに解約告知を認められていた場合に2004年に終了する会計年度末になされた機関会社から機関主体への超過供出、

b) 2003年3月4日以降の利益供出契約が遅くとも2004年12月31日までに解約告知を認められていた場合に2005年にはじめて終了する会計年度末になされた機関会社から機関主体への超過供出、

c) 2004年12月16日以前に終了する会計年度末になされた機関会社から機関主体への超過供出。

その時々の超過供出や関連する賦課期間におけるそれぞれの超過供出の合計によって2004年12月9日の国税法におけるEU指令の実施及びその他の諸規定の改正のための法律(BGBl.ⅠSeite 3310)の形式における法人税法37条2項1文に従って引き起こされる法人税の引き下げを上回って、その時々の超過供出や関連する賦課期間におけるそれぞれの超過供出の合計によって、2003年5月16日の税優遇措置及び例外規定の縮小に関する法律の形式における法人税法38条2項に基づく法人税の引き上げが、引き起こされる限りで。