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2021年1月9日土曜日

第274回研究会

● 日時:           2020年1月9日(土)14時~17時
● 会場:           Web会議システム「Zoom」を使用して開催します(詳細は月報をご覧ください)
● 報告者:       玉蟲由樹(日本大学)
● 報告判例: 2020年2月26日の第2法廷決定(2 BvR 2347/15ほか、自殺幇助に関する判決)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2020/02/rs20200226_2bvr234715.html
● コメンテーター:實原隆志(福岡大学)
 
➣ 決定要旨:
1.         a) 一般的人格権(基本法11項と結びついた基本法21項)は、個人の自律の表現として自己決定にもとづく死の権利を含む。
b) 自己決定にもとづく死の権利は、自殺する自由を含む。QOLおよび自己の存在の意味づけに関する本人の理解に応じて個人が自らの生命を終わらせようと決めることは、出発点において自律的自己決定の行為として国家および社会によって尊重されるべきものである。
c) 自殺する自由は、第三者に助けを求め、それが提供される限りにおいて援助を要求する自由をも含む。
2.         間接的ないし事実上の効力をもつ国家の措置も基本権を侵害しうるものであり、それゆえに憲法によって十分に正当化されなければならない。刑法典2171項における業務上の自殺援助の刑罰を伴った禁止は、自殺志願者に対して、その者によって選択され、業務上提供された自殺ほう助を要求することを事実上不可能なものとしている。
3.         a) 業務上の自殺援助の禁止は、厳格な比例原則を基準として審査されなければならない。
b) 要求可能性審査に際しては、人の助けを借りた自殺の規律がさまざまな憲法上の保護の視角間での緊張関係のなかにあるということが考慮されねばならない。自己責任のもとで自己の生命を終わらせることを決断し、そのために援助を求める者がもつ原則的な、自己の生命の終わりをも包括する自己決定権は、自殺志願者の自律と、ひいては生命という高次の法益を保護する国家の義務と対立する。
4.         憲法が自律と生命に承認する高次のランクづけは、原則として、刑法という手段を用いてでもそれらに対して実効的な予防的保護を行うことを正当化するにふさわしいものである。法秩序が自律を危険に晒すような自殺援助の形態を処罰することを定める場合には、法秩序は、かかる禁止にもかかわらず、個別ケースにおいて自由意思で提供される自殺ほう助へのアクセスが現実に可能となっていることを確保していなければならない。
5.         刑法2171項での業務上の自殺援助の禁止は、人の助けを借りて行われる自殺の可能性を、個人に対して現実にはその憲法上保護された自由の保障の余地をほとんど残さないような範囲に限定している。
6.         何人も、自殺援助をすることを義務づけられることはありえない。

クリップボード@月報284号

   毛利透『国家と自由の法理論――熟議の民主制の見地から』(岩波書店、202011月)
 
片桐直人「第5章 高度成長期と憲法」駒村圭吾・吉見俊哉編『戦後日本憲政史講義──もうひとつの戦後史』(法律文化社、202010月)
 
石村修「『公共の福祉』の原意と機能――感染症リスクに対応する原理」専修ロージャーナル16号(2020年)
 
辻村みよ子責任編集『憲法研究 第7号』(信山社、202012月)
工藤達朗「比較の中の日本の憲法訴訟――ドイツから見た日本ブランダイス・ルールは最高裁に妥当するか?」
柴田憲司「〈書評〉◆土井真一編著『憲法適合的解釈の比較研究』(有斐閣,2018年)」
 
山本龍彦=横大道聡編『憲法学の現在地――判例・学説から探究する現代的論点』(日本評論社、202012月)
石塚壮太郎「2 国家目的と国家目標規定」
篠原永明9 権利の保障と制度の保障」
波多江悟史16 国家助成と自由」
              栗島智明17 大学の自治・学問の自由」
前硲大志24 政党の位置づけ」
高田倫子28 内閣と行政各部」
山本真敬31 違憲判決の形式」
土屋武32 地方自治の本旨」
上代庸平33 財政」
 
栗島智明「研究不正の法問題に関する序論的考察――学問の自由の観点から」社会科学論集(埼玉大学)162号(202011月)39-56
 
藤井基貴=栗島智明「ドイツにおける研究公正と『学問の自由』(2)――電子ジャーナル問題をめぐるオープンアクセス化と二次公開」静岡大学教育学部研究報告(人文・社会・自然科学篇)71号(202012月)94-107
 
Tomoaki Kurishima, Reaktionen auf Corona aus öffentlich-rechtlicher Perspektive, in: Harald Baum/Ruth Effinowicz (Hrsg.), Reaktionen auf Corona im japanischen und deutschen Recht - Beiträge zur virtuellen Tagung am 19. und 20. August 2020 in Hamburg (Max Planck Private Law Research Paper No. 20/20), 2020, S. 112-120
 
自治研究9612号(202012月)
菅沼博子「ドイツ憲法判例研究<235> 協約単一法判決」

第273回研究会

● 日時:           2020年12月5日(土)14時~17時

● 会場:           Web会議システム「Zoom」を使用して開催します(詳細は月報をご覧ください)

● 報告者:       カール=フリードリッヒ・レンツ(青山学院大学)

● 報告判例: 2020年5月5日の第2法廷判決(2 BvR 859/15ほか、PSPP判決)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2020/05/rs20200505_2bvr085915.html

● コメンテーター:栗島智明(埼玉大学)

➣ 決定要旨:

1. 権限踰越の審査、基本理念侵害の審査の際、欧州連合の機関・関連主体の行為について、効力または解釈の問題が生じる場合、連邦憲法裁判所は審査の際に、原則としてEU裁判所が当該行為について行った内容・評価を前提とする。

2. EU条約19条1項2文で認められているEU裁判所への裁判に関する委託は、条約の解釈が理解不能のために客観的に恣意的である場合に、終了する。EU裁判所がその限界を超えた場合、その行動がEU条約19条1項2文・ドイツ国内同意立法の根拠を欠けることになる。そのために、当該判断は最低限でもドイツのために、憲法23条1項2文、20条1項・2項、79条3項によって必要である民主主義上の最低限の妥当性を欠けることになる。

3. 加盟国の中心的な利益に関わる場合(欧州連合の管轄権および欧州連合の民主的に正当化されている統合過程の解釈は原則としてそれに該当する)、欧州中央銀行が主張する目的について、裁判上の審査はそれを無条件に鵜のみしてはならない。

4. 行動する機関の幅広い裁量をEU裁判所の限定された審査密度と合わせた場合、限定されている個別権限の原則を明白に十分に順守していない。これでは、加盟国の管轄を継続的に解体できることになる。

5. 欧州連合の管轄に関する原則を順守することは、民主主義を確保するに決定的に重要である。統合過程の不可逆性により、欧州連合の基本原則の一つである限定されている個別授権が実質的に無視される結果になってはならない。

6. a) 欧州連合および加盟国の間の権限峻別の際、比例原則は民主主義・国民主権のために重大である。比例原則の無視は、欧州連合の管轄の基礎に変更を加え、限定されている個別権限の原則を迂回するおそれがある。

b) 国債を購入する制度が比例原則を侵害しないことは、目指す目標を達成することに適していること、そのために必要であることを前提とするが、更に通貨政策上の目標および生じる経済政策上の効果を明示し、評価し、斟酌することを前提とする。通貨政策上の目標を無条件に追及して経済政策上の効果を配慮しないことは、欧州連合条約5条1項2文および4項の比例原則を明白に侵害している。

c) 欧州中央銀行機構が経済政策・社会政策の管轄を有しないことは、欧州連合条約5条1項2文、4項の観点で、国債の購入制度が国家債務の残高、貯金、老後予備、不動産相場、経済的に生存できない企業の生き残りに発生する効果を把握し、これらの効果を目指す目標と関連することを、排除しない。

7. PSPPのような制度がEU運営条約123条の明白な迂回に該当するか否かは、個別基準の順守で決定されない。総合的な評価に基づいて判断される。特に33%の購入限度額および購入を欧州中央銀行の資金割合に基づいて分配することは、PSPPに基づいて一定の加盟国のために措置が取られること、ユーロ制度がある加盟国の多数債権者になることを阻止している。

8. PSPPに基づいて購入した国債に関するリスクを(事後的)に変更する場合、ドイツ連邦議会の予算に関する総合責任の限界を侵害ことになり、憲法79条3項と両立しない。その場合、憲法が禁止している第三者の意思決定について保証することを意味し、その効果を事前に計算できない。

9. 連邦政府および連邦議会は、欧州連合統合に関する責任に基づいて、欧州中央銀行による比例原則の検討を要請する義務を負う。当該法解釈を欧州中央銀行に対して主張しなければならない、またはその他の方法で条約を侵害しない状況に戻るようにしなければならない。

10. 憲法上の機関、行政庁および裁判所は、権限踰越行為の成立・実施・執行・管理に加担してはならない。この点は、連邦銀行にも妥当する。


クリップボード@月報283号

   小山剛=新井誠編『イレズミと法――大阪タトゥー裁判から考える』(尚学社、202011月)
小山剛「職業と資格──彫師に医師免許を要求することの憲法適合性」
栗島智明「ドイツ──職業の自由の憲法的保障の観点から」
 
プリマヴェラ・デ・フィリッピ=アーロン・ライト(片桐直人編訳)『ブロックチェーンと法――〈暗号の法〉がもたらすコードの支配』(弘文堂、202011月)
 
神橋一彦「公共施設をめぐる「管理」と「警察」―集会の自由との関係を中心に―」行政法研究36号(202010月)
 
有澤知子「ロー・スクールの入学プログラムとアファーマティブアクション-Grutter v. Bollinger-(判例研究)」大阪学院大学法学研究452号(20193月)
有澤知子「大学の学部の入学プログラムとアファーマティブアクション-Gratz v. Bollinger-(判例研究)」大阪学院大学法学研究4612号(20203月)
有澤知子「男女平等をめざすEU 取締役と議員における女性クオータ制の採用(論文)」大阪学院大学通信515号(20208月)
 
自治研究9611号(202011月)
中西優美子EU法における先決裁定手続に関する研究<40> ドイツ連邦憲法裁判所の『忘れられる権利Ⅱ』判決とEU基本権<(5)>
小山剛「ドイツ憲法判例研究<234> 私有地における集会の自由と基本権の私人間効力-缶ビール・フラッシュモブ決定」

第272回研究会

 ● 日時:           2020年11月7日(土)14時~17時

● 会場:           Web会議システム「Zoom」を使用して開催します(詳細は月報をご覧ください)

● 報告者:       山本真敬(新潟大学)

● 報告判例: 2017年3月29日の第2法廷決定(BVerfGE 145, 106、法人税法に関する決定)

● コメンテーター:       宮地基(明治学院大学)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2017/03/ls20170329_2bvl000611.html

➣ 決定要旨:

1. 2007年8月14日の企業税改革法2008の版(BGBl.I S.1912)における法人税法8c条1文ならびに2008年8月12日の資本参加のための枠条件を現代化する法律の版(BGBl. I S.1672)の法人税法8c条1項1文および2016年12月20日の法人における租税上の欠損金の清算(Verlustverrechnung)の継続展開のための法律(BGBl. I S.2998)の施行時点までに出された企業税改革法2008に引き続く版は、資本会社の引受済資本金(gezeichnetes Kapital)の25%を超える額を5年以内に買い手に直接的に委譲する(有害資本参加〔schädlicher Beteiligungserwerb〕)際に、有害資本参加にまで調整されていないか控除されていないマイナスの所得(非利用欠損金)がもはや控除され得ないという限りにおいて、基本法3条1項と両立し得ない。

2. 立法者は、遅くとも2018年12月31日までに、2008年1月1日にさかのぼって規律を行うことを義務付けられる。

3. 立法者が自らの上記義務を履行しなかった場合には、2019年1月1日に、基本法と両立し得ないことが確定された範囲において、法人税法8c条1文および8c条1項1文の無効が、法人税法8c条1文および8c条1項1文の施行の時点までさかのぼって生じる。


クリップボード@月報282号

 斎藤誠『バイオテクノロジーの法規整-交差する公法と知的財産法』(有斐閣、20209月)


日本公法学会『公法研究』82号(202010月)

毛利透「『縮小する社会』における民主政」

片桐直人「縮小する社会における財政の持続可能性と法」

柴田憲司「縮小する社会と生存権――「連帯」と憲法25条との関係をめぐる一考察

 

石塚壮太郎「[海外法律情報]ドイツ――働かざるもの食うべからず?」ジュリスト1550号(202010月)

 

斎藤誠「[巻頭言]記憶と実像」法学教室481号(202010月)

 

自治研究9610号(202010月)

大西楠テア「『保育を受ける権利』とドイツの家族政策」

栗島智明「ドイツ憲法判例研究<233>大学事務総長を任期付き官吏とする州法の合憲性」

 

鈴木秀美「時流・底流 国は放送局の自律、尊重を」毎日新聞 2020 9 28 日(東京朝刊)7

 

池上彰=鈴木秀美=吉永みち子=荻上チキ「開かれた新聞委員会 2020 確かな情報で信頼築け 政治報道をより透明に」毎日新聞 2020 10 4 日(東京朝刊)8-9

第271回研究会

● 日時:           2020年10月3日(土)14時~17時

● 会場:           Web会議システム「Zoom」を使用して開催します(詳細は月報をご覧ください)

● 報告者:       浮田徹(摂南大学)

● 報告判例: 2018年12月18日の第1法廷決定(BVerfGE 150, 309、車両ナンバー読み取りシステムに関する決定)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2018/12/rs20181218_1bvr279509.html

 ➣ 決定要旨(BeckRSより):

1. 補完性原理から導かれる、法律に対する直接の憲法意義の申立の前の専門裁判所への訴えについての基本的な義務は、申立人を、利用可能な選択肢とそれにより注意すべき期限に関し、予測のつかない危険に晒してはならない。この点で、法律上の期限に関する権利保護に有利な解釈が必要である。

2. 捜査のための警察の検問所あるいは検問地域の補助のためのナンバー自動読取りシステムに関する規定は、それが刑事訴追に貢献する限りにおいて連邦の立法権限の下にある。

3. 警察の捜査の法律上の規則に関する比例原則から導かれる要請についての基準について(BverfGE150, 244参照)

クリップボード@月報281号

  植松健一「議会の口頭質問と閣僚の出席義務-ドイツ連邦議会の口頭質問改革を手がかりに」立命館法学390号(20208月)36-82
 
渡辺康行=宍戸常寿=松本和彦工藤達朗『憲法II 総論・統治』(日本評論社、20209月)
 
初宿正典=辻村みよ子編『新解説世界憲法集〔第5版〕』(三省堂、20209月)
初宿正典(解説・条文)、毛利透(解説)「ドイツ連邦共和国」
奥田喜道「スイス連邦」
 
判例時報2450=2451号(秋季合併号)(20209月)
笹田栄司「【裁判制度のパラダイムシフト──過去と未来をつなぐ憲法上の10のテーマ(2)】判例に現れた「司法権」の批判的検討──「純然たる訴訟事件」の墨守?」
棟居快行「【特集 「検察庁法改正法案」が意味するもの】憲法問題としての検察制度の個人的な感想」
 
片桐直人「【ミクロ憲法学の可能性・1-2】原田コメントへの再応答」法律時報9210号(202010月)
 
毛利透「【判例セレクトMonthly】〔憲法〕2019年参議院議員通常選挙における投票価値較差の合憲性(高松高判令和元・1016)」法学教室480号(20209月)
 
玉蟲由樹「[#ゼミを語ろう]日本大学法学部 玉蟲由樹ゼミ(憲法)」法学セミナー789号(202010月)
 
自治研究969号(20209月)
中西優美子「【EU法における先決裁定手続に関する研究<39>】ドイツ連邦憲法裁判所の『忘れられる権利Ⅰ』判決とEU法(Ⅳ(4))」
高橋和広「ドイツ憲法判例研究<232>ドイツ版「Nシステム」の合憲性Ⅱ」