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2019年3月5日火曜日

第255回研究会


日時:201932日(土)14時~

場所:日本大学法学部4号館(地下)第4会議室A 

報告者:三宅雄彦(駒澤大学)

報告判例:2018612日の第2法廷判決(2 BvR 1738/12, 2 BvR 1395/13, 2 BvR 1068/14, 2 BvR 646/15

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2018/06/rs20180612_2bvr173812.html

決定要旨:

1.基本法9条3項の保護領域の人的範囲には、官吏も含まれる(判例集19巻303、312、322頁参照)。勿論、団結自由の基本権の保障に留保はないけれども、この基本権は、これと競合する第三者の基本権、及び憲法の位階を持つ他の権利により制限されうる。

2.a) 官吏のストライキ禁止は、基本法33条5項の意味における職業官僚制の本来的で伝来的な原則の一つである。この禁止は、伝来的原則として必要な条件である伝統性と実体性を充足している。

 b) 立法者は、職業官僚制の伝来的原則としての官吏のストライキ禁止を遵守しなければならない。この禁止は、官吏法上の扶養原理、誠実義務、終身原理、及び俸給を含む官吏法上の法関係の立法者による規律の原則、これらの諸原則と密接に結びついている。

3.a) 基本法の諸規定は国際法友好的に解釈しなければならない。欧州人権条約のテクスト及び欧州人権裁判所の判例は、憲法のレベルにおいて、基本法上の諸基本権及び法治国家的諸原理につき、その内容と射程を確定するための解釈上の補助手段として、用いられる(判例集74巻358、370頁、111巻307、317頁、128巻326、367-368頁。確定判例)。

 b) 条約加盟国は、それが当事者である全ての法的事件において欧州人権裁判所の終局判決に従うことを、欧州人権条約46条により義務づけられているが(判例集111巻307、320頁も参照)、この46条の適用領域以外でも欧州人権裁判所の判例は条約当事国を方向づけるのであり、その際、これを文脈化して当該事件の具体的諸状況を特に考慮しなければならない。この嚮導/方向づけ作用が特に強く働くときがあるが、それは、類似事例が条約加盟国の法秩序の妥当領域の中で言及されて、それ故に欧州人権裁判所の決定が該当する条約加盟国の(別の)手続が該当する場合である。

 c) 国際法友好的解釈は基本法により限界づけられる。条約友好的解釈が可能であるとしても、それは以下のときまでである。つまり、法律解釈及び憲法解釈として承認された方法からすれば、この条約友好的解釈がもはや合理的でないと思われるときである(判例集111巻307、329頁、128巻326、371頁参照)。ちなみに、基本法の条約友好的解釈の枠内にあるとしても、欧州人権裁判所の判決はできるだけ慎重に、分化した教義学を持つ既存の国内法秩序の中へと、組み込まねばならない。

4.ドイツにおける官吏のストライキ禁止は、基本法上の国際法友好性の原則と一致し、且つ、特に欧州人権条約の諸々の保障と合致する。欧州人権裁判所の判例を考慮した場合にも、ドイツ法と欧州人権条約11条の間に衝突状況があると確認することはできない。

クリップボード@月報第265号

赤坂幸一「統治機構論探訪 22――最高裁判例の形成過程(5)」法セミ769号(2019年2月号)

赤坂幸一「日本国憲法のアイデンティティ 第4回 公権力の透明性と理由提示」論究ジュリスト(2018年秋号)139-150頁

鈴木秀美「『開かれた新聞』委員会 座談会 激動の平成 どう総括、新しい時代 どう対応」毎日新聞(東京朝刊)2019年1月4日8-9面

土屋武「ドイツ憲法判例研究(212) NPD違憲確認訴訟[連邦憲法裁判所第二法廷2017.1.17判決]」自治研究95巻1号(2019.1)137-148頁

カール・フリードリヒ・レンツ「ドイツ憲法判例研究(213) 原発燃料税法に関する違憲決定[連邦憲法裁判所第二法廷2017.4.13決定]」自治研究95巻2号(2019.2)145-152頁

藤野美都子・佐藤信行編『憲法理論の再構築 植野妙実子先生古稀記念論文集』(敬文堂、2019年)
加藤一彦「ナチス憲法としての授権法――1933年授権法の悪魔的効能」
畑尻剛「ラインの右岸と左岸の憲法裁判所――M.イェシュテット教授の講演を素材に」
工藤達朗「憲法の自殺?――主権委譲の可能性をめぐって」