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2020年9月5日土曜日

第270回研究会


● 日時:           202095日(土)14時~17
● 会場:           Web会議システム「Zoom」を使用して開催します(詳細は月報をご覧ください)
● 報告者:       棟久敬(秋田大学)
● 報告判例:   2020114日の第2法廷決定(2 BvR 1333/17、司法修習生のスカーフ事件)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2020/01/rs20200114_2bvr133317.html
 
➣ 決定要旨
1. 司法修習生が、国家の代表者のように見える活動、または見える可能性のある活動において、宗教的な根拠を持つ服装規定を遵守することによりある宗教団体へ自らが所属していることを明らかにしてはならないという司法修習生に課された義務は、基本法41項及び2項により保障される個人の信仰の自由を侵害する。
2. 信教の自由への侵害をこの状況において正当化しうる、信仰の自由と衝突する憲法上の利益として考慮されるのは、国家の世界観的・宗教的中立性の原則、司法の機能遂行能力(Funktionsfähigkeit)の原則および基本権として保護される第三者の消極的な信教の自由の可能性である。これに対して、裁判官の公平性(Unparteilichkeit)の要請や世界観的・宗教的な平和の確保という観念は〔本件の信仰の自由への侵害を〕正当化する効力を発揮することはない。
3. 国家の中立性への義務づけは、国家の公職担当者(Amtsträger)の中立性への義務づけに他ならない。というのも、国家は人間によってのみ行動しうるからである。もっとも、国家は必ずしも公職の遂行の折にその公職担当者によってなされるあらゆる私的な基本権の行使と同一視されるとは限らない。しかし、国家が―司法の領域におけるように―公務の遂行の外面的な徴表へ特段の影響を与えるような場合には、そうした同一視が問題となる。
4. いかなる裁判も基本権の擁護に奉仕するのであるから、司法の機能遂行能力は法治国家の基本的な条件であるとともに、基本法の価値体系にしっかりと定着している。機能遂行能力が前提とするのは、個々の裁判官の人格に対してだけでなく、司法全体に対しての社会的な信頼がある、ということである。全国民の「絶対的な信頼」は確かに達成することはできない。しかし、国家には最適化の任務が課せられている。
5. まさに宗教的・多元的な社会を反映することを目的とした宗派に開かれた共同学校の領域とは異なり、国家は司法においては古典的・高権的に、そのためもっと大きな侵害の効果をもって市民に向き合う。
6. 裁判官が職務中に宗教的なシンボルを着用することは、当該裁判官の客観性に疑念を生じさせるのにふさわしいとは、それ自体としては考えられない。
7. 寛容の要請を考慮して憲法上の利益間の規範的な緊張関係を解決することは、なかんずく民主的な立法者の責務である。民主的な立法者は、公的な意思形成過程においてすべての人にとって受け入れられうる妥協点を見出さなければならない。宗教的な関連性を有する標識を用いることを最大限自制するように、すべての宗派の司法機関の構成員に義務づける規制が、憲法上の地位を有する価値によって正当化されるか否かを左右する実際の状況と今後の動向に関する判断について、民主的な立法者は評価特権を有する。
8. 手続の対象となっている禁止の具体的な内容形成にかんがみると、法廷で異議申立人に宗教的なシンボルの着用を憲法上禁止または許容せざるをえなくなるほどの圧倒的な重みづけは、本件で衝突しているいかなる法的地位にも与えられない。それゆえ、司法修習期間中に世界観的・宗教的な観点において中立的にふるまう義務についての立法者の決定は憲法上の見地から尊重されなければならない。

クリップボード@月報280号

毛利透「立法権にとっての憲法と司法権にとっての憲法」判例時報2441号(20206月)98

棟久敬「信教の自由と国家の教育委託―宗教的な理由に基づく授業の免除に関するドイツの判例の検討を中心として」秋田大学教育文化学部研究紀要人文・社会科学75号(20203月)83

神橋一彦「死者情報を含む保有個人情報に関する開示請求」行政法研究33号(20205月)83

辛嶋了憲「ドイツ一般平等原則における審査モデルの一検討-フスター・モデルを中心に」一橋法学192号(20207月)727

鈴木秀美「知る権利と人格権の比較衡量 独はプレス評議会が苦情対応(特集 実名と被害者報道)」ジャーナリズム362号(20207月)50

中西優美子「ドイツのコロナウイルス対応とEU:危機を次世代のためのチャンスに (21世紀政策研究所 コロナウイルス問題が欧米諸国に及ぼす影響)」経団連687号(20207月)45

https://www.keidanren.or.jp/journal/monthly/2020/07/p45.pdf

片桐直人「ミクロ憲法学の可能性・1-1 新しい葬法の登場と「弔う秩序」」法律時報929号(20208月)

高橋雅人「〈特集=どうなる、オリ・パラ!?――東京2020開催延期にともなう法的課題〉オリンピックと政治――「政治による利用」と「スポーツ団体の自律」」法学セミナー787号(20208月)

渡辺康行「団体の内部自治と司法権-地方議会を中心としてー」判例時報2446号(20208月)83

片桐直人「〈特集=終活と法〉死の個人化と法――企画趣旨に代えて」法学セミナー788号(20209月)

小山剛=新井誠=横大道聡編『日常のなかの〈自由と安全〉―生活安全をめぐる法・政策・実務』(弘文堂、20207月)

上代庸平「社会安全確保の費用対効果」

石塚壮太郎「ドイツにおけるテロ対策としての電子監視」

實原隆志「ドイツ国内における大規模イベント時の安全対策」

横大道聡編『憲法判例の射程〔第2版〕』(弘文堂、20208月)

山田哲史「第2章 公務員の政治的行為の制約」「第35章 立法事実の変化の検討の仕方と救済の観点」

栗島智明「第4章 判例における私人間効力論」

赤坂幸一「第16章 職業の自由」

柴田憲司「第20章 生存権訴訟」「第31章 行政裁量・立法裁量と「専門技術的・政策的判断」の内実」「第33章 合憲限定解釈と憲法適合的解釈」

カール・シュミット=フリッツ・ハルトゥング=エーリヒ・カウフマン初宿正典編訳、栗原良子=柴田尭史=瀧井一博=宮村教平訳)『第二帝政の国家構造とビスマルクの遺産』(風行社、20208月)

畑尻剛「ドイツ憲法判例研究<230> 普通選挙の原則と被全世話人および在精神科病院触法障碍者の選挙権制限」自治研究967号(20207月)153

柴田憲司「ドイツ憲法判例研究<231> 農業者の老齢年金の受給要件としての農場の引き渡し(Hofabgabe)と所有権保障(基本法一四条)」自治研究968号(20208月)150

棟居快行「ミニ論点:旧優生保護法請求棄却」毎日新聞202071日(東京朝刊)2

池上彰=鈴木秀美=吉永みち子=荻上チキ「開かれた新聞委員会2020 検察庁法 議論し尽くせ、コロナ第2波へ備えを」毎日新聞2020629日(東京朝刊)10-11

鈴木秀美「制裁金60憶円 ドイツのSNS対策法を日本がまねしない方がいい理由(透明の刃~SNS暴力考)」毎日新聞電子版2020720日(https://mainichi.jp/articles/20200720/k00/00m/040/001000c

2020年7月3日金曜日

第269回研究会


● 日時:202074日(土)14時~17
● 会場:Web会議システム「Zoom」を使用して開催します(詳細は月報をご覧ください)
● 報告者: 石塚壮太郎(北九州市立大学)
● 報告判例: 2019115日の第1法廷決定(1 BvL 7/16、ハルツⅣに関する決定)

➣ 決定要旨
1. 国家による基礎保障給付の内容形成に対する憲法上の中心的な諸要請は、人間に値する生存最低限の基本権による保障(基本法201項と結びついた11項)から生じる。身体的および社会文化的な生存が、一体的に確保されなければならない。請求を基礎づける人間の尊厳はすべての者に当然に与えられ、「尊厳に値しない」と思われる行為によってすら失われることはない。しかし基本法は、生存保障給付の利用を後置原則(Nachranggrundsatz)と結びつけること、すなわち、人が自らの生存をあらかじめ自ら確保することができず、現実の困窮が存在する場合にのみ給付を受けることができるということを、立法者に禁じていない。
2. 立法者は、稼得可能ではあるが、自らの生存を確保することができず、したがって国家給付を求める人に対して、自らの困窮を回避するかまたは克服するのに、受入可能な形で(zumutbar)積極的に協力するよう求めることができる。立法者は、その点で、比例的な義務を比例的な制裁によって貫徹するように決めることもできる。
3. 自らの困窮の克服のための協力義務が重要な理由なしに満たされず、立法者が生存保障給付の一時的な剥奪(Entzug)によりそれを制裁する場合には、立法者は並外れた(außerordentlich)負担を課すことになる。これは厳格な比例性要請に服する。社会国家の内容形成に関する規律の適合性、必要性および相当性(Zumutbarkeit)について通常は広い評価余地は、ここでは制限されている。そのような規律の効果についての予測は、十分に信頼できるものでなければならない。その規律が有効である期間が長ければ長いほど、それにより立法者が確かな評価を手に入れられていればそれだけ、説得的想定に基づいているとは言えなくなる。さらに該当者には、生存保障給付の減額を自らの行動によって防ぐことが実際上可能でなければならない。つまり、減額後にも給付を再び得るための諸要件を受入可能な方法で(in zumutbarer Weise)満たすことが、自己の固有の責任に委ねられなければならない。

クリップボード@月報279号


高田敏初宿正典編『ドイツ憲法集〔第8版〕』(信山社、20206月)

赤坂正浩「憲法ドグマーティクと憲法裁判権」『立教法学』102号(20203月)渋谷秀樹教授退職記念号149-187

辻村みよ子編集代表『憲法研究 第6号』(信山社、20205月)
西土彰一郎「『国民の知る権利』のメディア論――公共圏の変容と国民の知る権利論の応答」
小山剛「監視と萎縮――基本権侵害の『水平的加算』序説」

柴田憲司4. かわいいは正義」「16. 車を借りると生活保護は廃止?」宍戸常寿編『憲法演習ノート〔第2版〕』(弘文堂、20204月)

法律時報926号(20206月)
毛利透ほか「[座談会]平成の立法と判例(上)——国際的な環境の変化」
毛利透「再掲載にあたって」

山本真敬「[海外法律情報]COVID-19とドイツの法状況」ジュリスト1546号(20206月)

自治研究966号(20206月)
太田航平「ドイツ憲法判例研究<228> 公法上の収容における身体拘束の合憲性」

鈴木秀美「〔有識者に聞く〕 守るべき一線越え」(聞き手:川崎桂吾)毎日新聞2020522日朝刊23

鈴木秀美SNSの違法な中傷、放置で最大60億円の制裁金も。規制強めるドイツ法は理想のモデル?専門家に聞いた」(聞き手:國崎万智)ハフポスト20200617

2020年6月6日土曜日

第268回研究会


● 日時:             202066日(土)14時~17
● 会場:             Web会議システム「Zoom」を使用して開催します
● 報告者:        片桐直人(大阪大学)
● 報告判例:    2018718日の第1法廷判決(BVerfGE 149, 222、放送負担金判決)

➣ 決定要旨
1.      公の施設につき、その(潜在的な)便益を享受する者に対し、その費用を負担金の形式で特別の負担として徴収することは、基本法に反しない。
放送負担金の徴収に相対する利益は、公共放送を利用しうる可能性に存する。
. 不特定多数またはほぼすべての国民に対しても、それぞれが個別的具体的利益を享受し、その利用が現実的に可能だと思われる限りにおいて、負担金を課すことができる。
3.州の立法者は、私的な領域においては公共放送の提供する番組サービスは住居で利用されるのが典型的であるとの前提の下で、住居の占有者に放送負担金の負担義務を課すことが許される。受信設備の有無や利用の意思は問題にならない。
私的な領域における放送負担金負担義務に加えて、事業目的での利用可能性は、事業所と自家用に用途が限定されていない自動車の占有者について、特別の利用があることを示している。
4.負担金の負担義務者は、同一の利益を重ねて吸収されない。
複数の住居の所有者は、私的な放送利用の可能性に対して、合計でひとつ以上の完全な放送負担金を課されない。

クリップボード@月報278号


法律時報925号(20205月)
■特集=憲法学の課題——グローバル化とナショナリズムの間で
➣オリヴァー・レプシウス(前硲大志訳)「正統化・解釈・妥協——現代憲法学の三つの課題」
高橋雅人「日本国憲法におけるグローバル化と国家の主体性」
●論説
➣ウヴェ・フォルクマン(村山美樹訳)「憲法改正と憲法変遷——ドイツ連邦共和国の憲法における安定性と動態性の関係についての考察」

柴田尭史「[最新裁判例研究]憲法・選挙供託金違憲訴訟[東京地判令元・5・24 LEX/DB文献番号25563149]」法学セミナー784号(20205月)

小西葉子「暗号化通信の傍受に関する憲法上の課題―ドイツ刑事訴訟法上の端末通信傍受を題材として――」Nextcom Vol.4220206月)3645

自治研究965号(20205月)
中西優美子EU構成国における司法権の独立と先決裁定手続<(7)>EU法における先決裁定手続に関する研究<38>
西土彰一郎「ドイツ憲法判例研究<228> 公権力担当者の発言と政治的中立性義務」

第267回研究会


● 日時:             202059日(土)14時~17
● 会場:             Web会議システム「Zoom」を使用して開催します
● 報告者:        菅沼博子(名古屋商科大学)
● 報告判例:    2017711日の第1法廷判決(BVerfGE 146, 71Tarifeinheitsgesetz
➣ 決定要旨
1.         基本法93項の自由権は、団結体固有のあらゆる活動を保障する。とりわけ、労働協約の締結、締結された労働協約の存続と適用、さらに争議行為を保障する。しかし、この基本権は、自己の利益のために、労働協約の交渉において重要な社会的地位や排除効を無制約に利用する権利を与えるものではない。
2.         基本法93項は、団結体の存続を保障するが、個々の団結体の存続を保障するものではない。ただし、特定の労働組合を協約締結から排除し、特定の種類の労働組合の存立の基盤を奪うことを目標とした国家の措置は、特定の性質の基準と同様に基本法93項に違反する。
3.         基本法93項の保護領域に含まれ、協約の自律性のシステムを作り出し、保障しようとする当該規制(労働協約法4a条)は、正当な目的を追求している。この目的を達成するために、立法者は、対立する協約当事者の間の対等性を生み出すことができる。それだけでなく、労働協約の交渉は、公正な調整を可能にするかぎりで、労働協約に内在する適正さの推定(Richtigkeitsvermutung)によって相応しい経済条件および労働条件をもたらす構造的な前提条件を作り出すために、労働協約の当事者間の関係を規律することもできる。
4.         労働協約の自律性の構造的な前提条件を規律する場合、立法者は評価特権と広範な行為の余地を有している。多数派協約の当事者を一方の側とすることのみから生じる問題は、原則的に、団結の自由の制約を正当化するものではない。

クリップボード@月報277号


Toru Mori, Die Bedeutung der Generationengerechtigkeit für das Verfassungsrecht, 法学論叢18656号(20203月)1226

工藤達朗「憲法に国家は必要か?――グローバル化の中の憲法概念」日本比較法研究所設立70周年記念『グローバリゼーションを超えて』(中央大学出版部、2020年)75頁以下

渡辺康行「コメント」伊藤滋夫編『憲法と要件事実 <法科大学院要件事実教育研究所報18>』(日本評論社、20203月)6872頁、140145

藤井康博「環境問題はどこまで憲法問題か──環境憲法の理論と解釈」論究ジュリスト33号(20204月)

丸山敦裕「Ⅰ 憲法の視点――「SNS問題」を考える <特集 『法学の視点』からニュースを考える>」法学教室475号(20204月)

石塚壮太郎「ドイツ―音楽サンプリングは著作権侵害にあたるのか <海外法律情報>」ジュリスト1543号(20204月)

林知更「歴史哲学の後で――憲法学における外国法の参照 <特集= 外国法の参照>」法律時報924号(20204月)

Tomonobu Hayashi, Staat als Garant der individuellen Freiheit: die Rezeption Böckenfördes in Japan, in: Mirjam Künkler /Tine Stein (Hrsg.), Die Rezeption der Werke Ernst-Wolfgang Böckenfördes in international vergleichender Perspektive, Beihefte zu »Der Staat«, Band 24 (2020), 125 ff.

鈴木秀美「『忘れられる権利』と表現の自由・再論』――ドイツ連邦憲法裁判所の2つの決定を手がかりに」
メディア・コミュニケーション70号(20204月)1~18

「ドイツのSNS対策法―法規制と表現の自由」ヒューマンライツ385号(20204月)1~8頁

池上彰=鈴木秀美=吉永みち子=荻上チキ「開かれた新聞 委員会から コロナ不安に応えたか」毎日新聞2020410日(東京朝刊)17 

宮村教平「ドイツ憲法判例研究<227> 大学入学希望者に対する定員配分手続きの憲法適合性」自治研究964号(20204月)150161

第266回研究会


● 日時:             201944日(土)14時~17
● 会場:             Web会議システム「Zoom」を使用して開催します
● 報告者:        栗島智明(埼玉大学)
● 報告判例:    2018424日の第2法廷決定(BVerfGE 149, 1
➣ 決定要旨
1.      職業官吏制度の伝統的原則としての終身任用原理は、終身任用の官吏が有する基本的身分を保護するだけでなく、終身任用の官吏にそれぞれ委ねられた身分法上の職務(Amt)をも保護する。終身任用関係によって保障される、身分法上の職務の不可奪性には根本的な意義が認められる。というのも、まさにその不可奪性こそが、委託された職務を官吏が遂行するにあたって、法律および法への拘束という利益のために必要不可欠な独立性を保障するためである。
2.      a) 伝統的に、いくつかの特定の官吏関係は基本法335項で保護された核心領域から除外されており、終身任用原則からの逸脱として認められている。
         b) 期限付き官吏関係の制度形成は、基本法335項により保障された終身任用原則に対する介入として、該当する事項領域の特殊性およびそれと結びついた任務遂行の特殊性を考慮する場合にのみ、正当化されうる。
c) 該当する地位および任務の範囲から生じる特別な事項法則性により終身任用の原則およびあらゆる身分法上の職務の終身委託の原則からの例外が必要とされるか否かにつき、一般化した答えを出すことはできない。その問いに答えるためには、個別事案におけるそれぞれの規律構造に関してあらゆる重要な観点を考慮した、具体的な評価をすることが必要である。
3.      a) ブランデンブルク州の大学法における大学事務局長(Hochschulkanzler)の地位およびその任務の範囲からは、終身任用の原則および身分法上の職務についての終身委託の原則からの例外を必要とさせるような特別な事項法則性は導き出されない。
b) ブランデンブルク州の大学法立法者は、大学総長に強力な独任制の統率の地位を与えるという規範的な組織決定・構造決定を行った。この決定それ自体に疑義はないが、終身任用原則からの逸脱を正当化しうるものではない。大学総長(Hochschulpräsident)の責任領域のなかに大学事務局長を位置づけ、ないしそれに従属させることは、事務局長を期限付き官吏関係として任用するための十分な事項理由とはならない。
c) ブランデンブルク州の大学法における具体的な制度形成における大学事務局長は、自治体の選挙官吏(Wahlbeamte)や政治官吏(politische Beamte)と比較しうるものではない。

クリップボード@月報276号


神橋一彦『行政判例と法理論』(信山社、20203月)

神橋一彦「地方議会議員に対する懲罰と「法律上の争訟」-出席停止処分に対する司法審査を中心に―」立教法学102号・渋谷秀樹教授退職記念号(20203月)

初宿正典=高橋正俊=米沢広一=棟居快行『いちばんやさしい憲法入門〔第6版〕』(有斐閣、20203月)

大橋洋一=仲野武志編『法執行システムと行政訴訟――髙木光先生退職記念論文集』(弘文堂、20203月)
毛利透「ロールズとハーバーマスにおける宗教と政治」
斎藤誠「行政過程における行政争訟の要請と除外―その法理に関する覚書」

松本和彦21 辺野古環境影響評価手続やり直し義務確認等請求事件 福岡高那覇支判平成25年(行コ)第11号 平成26527日民事部判決(判例集未登載)」環境法研究10号(20203月)

中西優美子「〈巻頭言〉フォンデアライエン欧州委員会発足」EU法研究7号(20203月)

岡田俊幸「私有地における集会の自由」日本法学852号(20199月)175

玉蟲由樹「平等取扱原則と比例性」日本法学852号(20199月)482

櫻井智章「【判例セレクトMonthly】〔憲法〕面会交流権の憲法上の権利性(東京地判令和元・1122)」法学教室474号(20203月)123

村山美樹「ドイツ憲法判例研究(226)カトリック病院の忠誠義務と教会の自己決定権-医長事件」自治研究963号(20203月)153-160

中西優美子EU構成国における司法権の独立と条約違反手続<(5)> EU法における先決裁定手続に関する研究<37>」自治研究963号(20203月)111-122

2020年2月29日土曜日

第265回研究会

●日時:  201937日(土)13時~1815(予定) *2人の会員に報告して頂くため、通常より早めの開始となります
会場:  慶應義塾大学三田キャンパス 南館地下2階2B23教室
キャンパスマップ https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html(2番の建物です)

【第1報告】 13時~15
報告者:       小山剛(慶應義塾大学)
報告判例:   2015718日の第1法廷第3部会決定(1 BvQ 25/15Bierdosen-Flashmob事件)
決定要旨NJW編集部によるもの)
1.     集会の自由および意見表明の自由の基本権と、公共の往来を開通させ、それによって一般的なコミュニケーションの場を作出した私人の基本権との衝突がいかなる具体的諸原則に従って解決されるべきかについて、連邦憲法裁判所はいまだ判断しておらず(vgl. BVerfGE 128, 226 [250] = NJW 2011, 1201)、これは本案手続で明らかにされねばならない。
2.     私人の権利を根拠とする立ち入り禁止から集会挙行の事実上の禁止が生じることがないよう、連邦憲法裁判所法32条の仮の権利保護手続きの枠内で行われる帰結の衡量について。
3.     個別事件における帰結の衡量の結果、企図された集会の事実上の禁止が土地所有者の所有権によって根拠づけされない場合、原則として催事の宣伝の禁止も認められない。

【第2報告】 1515分~1815分(予定)
報告者:       高橋和広(東邦大学)
報告判例:   20181218日の第1法廷決定(BVerfGE 150, 244、ドイツ版NシステムⅡ)
決定要旨
1.        自動的な車両番号の検査は、たとえ結果が“不適合”でデータが即座に消去される場合であっても、その番号が検査の対象になる者すべての情報自己決定権への介入を根拠づける(BVerfGE 120, 378と相違)。
2.        基本法7411号により、立法について連邦に割り当てられている刑事訴追の問題と、原則として州に委ねられている危険防禦の問題との間に境界を設定するためには主に、規定の内容形成を客観的に見たときに明らかになるところの規制の目的を顧慮しなければならない。 州の立法者は、規制の事実上の作用が、刑事訴追をも促進するものであったとしても、それによって危険防禦に資する規制を妨げられることは無い。それでも、その規制は、州の権限が存在する目的設定から厳格に特定されるものでなければならない。
3.        目標とされる人または物を捜索するための、警察の取締りは、基本権介入として比例原則に従い、客観的に特定され、かつ限定されたきっかけを前提とする。それによって、それらの取締りは、危険を伴う行為又は特別な危険源の制御と関連しており、それ故にきっかけが無くとも正当化され得る取締りとは区別される。
4.        自動的な車両番号の検査は、その介入の重大性を考慮し、相当に重要な法益の保護又は比較的重要な公共の利益に資するものでなければならない。データの照合のために引き合いに出される手持ちの捜査情報は、事案と関係するものに限定されなければならない。
5.        番号検査が、重大な犯罪又は集会の自由に関する犯罪を抑止するための警察の検問所を支援するものとして憲法と合致するのは、そのような検査場所を設置すること自体が、十分に重要なきっかけと結びついている場合である。具体的な危険が前提とされている場合は、これに該当する。
6.        隠蔽捜査(Schleierfahndung)の手段としての番号検査は、特別な正当化を必要とする。この正当化は、ヨーロッパ内の国境管理の廃止と、それによって容易になった犯罪の遂行に立ち向かうという目的から生じる。検査が実質的かつ地域的に、首尾一貫した形で国境との関連性を示していることが前提条件である。

クリップボード@月報275号


Toru Mori, Wirkt in der Abwägung wirklich das formelle Prinzip? – Eine Kritik an der Deutung verfassungsgerichtlicher Entscheidungen durch Robert Alexy, Der Staat 58 (2019), S.555–573

棟居快行『憲法の原理と解釈』(信山社、20201月)

曽我部真裕=赤坂幸一=新井誠=尾形健編『憲法論点教室〔第2版〕』(日本評論社、20202月)
赤坂幸一4  判例の捉え方」「9  合憲限定解釈」「22 法律と条例の関係」
毛利透23 法律の概念、個別的法律」「24 客観訴訟と司法権」
赤坂幸一片桐直人「憲法論点教室実践編」

杉原周治「【時の問題】国家による芸術助成と表現の自由――『あいちトリエンナーレ2019』問題を素材として」法学教室472号(20201月)49

西土彰一郎「取材・報道の自由を語る作法 <特別企画 憲法改正問題と報道の自由>」法律時報922号(20202月)86

林知更「日本国憲法のアイデンティティ」論究ジュリスト32号(20202月)

片桐直人「企画趣旨<特集=カジノがやって来る――IR誘致をめぐる法的課題>」法学セミナー782号(20203月)

石村修「政府の憲法解釈」専修ロージャーナルNo.15201912)

辛嶋了憲「連邦憲法裁判所における一般的平等原則審査の変遷」一橋法学183号(201911月)

工藤達朗「立憲主義の概念と歴史」中央ロー・ジャーナル163号(201912月)

ニールス・ペーターゼン=フェリックス・フシャール(柴田憲司=徳本広孝=鈴木博人=小野寺邦広訳)『ニールス・ペーターセン教授講演集・公法における比例原則と家族法におけるヨーロッパ人条約の機能』(中央大学出版部、201912月)

Karl-Friedrich Lenz「特異点とEUAI倫理方針」青山法務研究論集18号(2019.10

マティアス・イェシュテット(畑尻剛吉岡万季訳)「憲法裁判所の同質性と異質性――フランス憲法院とドイツの連邦憲法裁判所の比較観察」比較法雑誌533号(201912月)

中西優美子EU運営条約二六七条三項の先決付託に関するフランス国務院(Conseil d'État)の義務違反――EU法における先決裁定手続に関する研究<36>」自治研究961号(20201月)95

小山剛「ドイツ憲法判例研究<224> 第二次スカーフ決定」自治研究961号(20201月)145

武市周作「ドイツ憲法判例研究<225> ゲームセンター不許可事件」自治研究962号(20202月)140

池上彰=鈴木秀美=吉永みち子=荻上チキ「開かれた新聞委員会・座談会 混沌の世界 どう報道、政権の緩み「桜」が象徴」毎日新聞202014日(東京朝刊)1819