連絡事項

月報クリップボードに掲載すべき情報をご存じの方は、運営委員・月報担当までご連絡ください。

所属先の変更等で、メールアドレスに変更がある場合には、速やかに運営委員・月報担当までご連絡下さい。

月報メールが戻ってくるアドレスがいくつかあります。研究会前にもかかわらず月報が届かないという方は急ぎご連絡ください。



2018年9月30日日曜日

第251回研究会

日時:2018年10月12日(金) 18時~20時 *公法学会前日
会場:専修大学法科大学院棟3階 836教室 *いつも使っている教室の隣です。
報告者:渡辺洋(神戸学院大学)
報告判例:2017年11月7日第2法廷判決(2 BvE 2/11) [公的企業に係る政府の情報提供義務とその議会統制]
決定要旨:
1.     基本法38条1項2文および20条2項2文に基づく議会の情報請求権の趣旨は、提起された諸疑念に対し公に応えることにある。議会の質問に対する回答は、秘密を保持する正当な利益がある場合、秘密保護規則を適用しつつ、議員の質問権と競合する諸法益とに適切な調整をもたらすことができる。
2.     憲法が保障する議会の質問権・情報請求権には限界があるが、その限界が単純法律の定めるところであっても、その根拠は憲法になければならない。契約または単純法律で定められた守秘規定も、それ自体ではこの質問権・情報請求権を制約することができない。
3.     議会の情報請求権は、民主主義原理から導かれる政府の対議会責任の表現として、政府の責任領域に入る事項に限って関与しうる。この政府の責任は、民主的正統化の脈絡で、[その株の]大半ないしすべてを連邦が保有する私法的形態の企業の全活動にわたる。この場合、政府責任は法律によって認められた関与・監督権に限定されない。
4.     ドイツ鉄道株式会社(以下、DBAGと略記)に対する連邦政府の責任領域は、持ち株の管理 [die Ausübung der Beteiligungsverwaltung] ならびに連邦諸官庁の規制活動および基本法87e条4項に基づく保障委託の適切な履行に関わる。加えて、DBAGの企業活動も連邦政府の責任領域にある。この責任関係は基本法87e条によって解消されない。
5.     連邦政府は、DBAGの基本権に関わるとして個別の議会質問に対する回答を拒否することはできない。同社は、国が完全に支配する法人として、個々人による個人の自由の行使に資さず、基本権を援用しえない。基本法87e条も、DBAGに対し、国が(公共の福祉の観点から)企業経営に影響を与えることに対する防禦権的地位を認めていない。
6.     秘密保持を要する諸々の情報が公知となることで脅かされる連邦またはラントの利益(国益)は、連邦議会の情報請求権の限界を成す。
 a. 国の(持ち株)企業の信用情報を保護する国家財政上の利益は、憲法上の国益に関わる重要事項である。
 b. 銀行その他の金融機関に対する国の効果的な監督、金融市場の安定および金融危機における国の効果的な支援措置もやはり重要な国益事項であり、議会質問に対する連邦政府の回答義務を限定しうる。
7.     憲法に則した連邦議会の質問権・情報請求権と、それと結びついた連邦政府の情報提供義務は、情報提供に際して基本権に介入する十分な根拠となる。その限りで、法律でさらに規定する必要はない。
8.     議会の情報請求権は要求しうる限りのものである。連邦政府が任意に処理できる情報、または相応の経費で調査しうる情報はすべて報告されなければならない。連邦政府は情報入手のため任意となる手段はすべて尽くさなければならない。
9.     連邦政府はドイツ連邦議会の情報請求権に応えるという憲法上の原則的義務を負うことから、要請された回答を拒否する理由を説明しなければならない。連邦政府が、回答を、連邦議会刊行物で公表するよう指示された方法で行わず、ドイツ連邦議会秘密保護局[の取扱事項]に分類してドイツ連邦議会に提供する場合は、連邦政府は特段の説明義務を負う。

クリップボード@月報第261号

毛利透須賀博志・中山茂樹・片桐直人
『比較憲法学の現状と展望(初宿正典先生古稀祝賀)』(成文堂、2018年9月)
高田篤「公法学テキストの受容とその文脈――Dietrich Jeschの日本とドイツにおける受容をめぐって」
山中倫太郎「非常事態の布告制度の憲法原理上の地位――ドイツ近現代憲法における憲法制度との関連を踏まえて」
毛利透「世代間正義と民主主義」
樺島博志「人工知能技術の人間存在への倫理的影響について」
須賀博志「宮沢俊義『国家神道』像の批判的検討」
赤坂幸一「議場構造の憲法学」
片桐直人「公債発行と憲法85条――議論の手掛かりを求めて」
篠原永明「『憲法上の権利』の導出に関する試論――ドイツの公権論を参考に」
横田守弘「ドイツ連邦憲法裁判所と就学義務」
倉田原志「ドイツにおける教会の自己決定権と労働者の基本権――教会労働者の忠誠義務に関する判例の展開を中心に」

村西良太「『独立命令』全面違憲論の批判的考察」宇賀克也編『行政法研究』26号(2018.9)

赤坂幸一「統治機構論探訪 18――最高裁判例の形成過程(1)」法セミ765号(2018年10月号)

三宅雄彦「ドイツ高速料金の憲法理論――クリュガーの道路有料化批判」法律時報90巻10号(2018.8)

棟居快行「政府の憲法解釈雑考」専修大学法学研究所所報57号(2018.9)

中西優美子「EUとカナダ間の乗客名簿(PNRデータ)の移転および処理に関する協定案についての裁判所意見1/15 国際商事法務 Vol. 46, No. 8(2018年)1158-1165頁

中西優美子「Taricco事件をめぐるイタリア国内裁判所とEU司法裁判所の対話」自治研究94巻9号 (2018年)110-122頁

鈴木秀美編『メディア法研究』創刊号(2018.9)
鈴木秀美「メディア法の主要課題」
西土彰一郎「放送法の思考形式」
濱田純一「基調講演:放送の自由と規制」
鈴木秀美「海外動向:ドイツ連邦憲法裁判所の放送負担金判決」
石塚壮太郎「海外動向:ドイツ連邦大臣によるAfD公式批判に『レッドカード』―ヴァンカ事件」

鈴木秀美「『開かれた新聞』委員会 座談会 具体性なき非核化、拉致『解決』」毎日新聞(東京朝刊)2018年7月6日10-11面

柴田憲司「ドイツ憲法判例研究(208) 求職者のための最低生活保障の算定の際に家族の成員の収入を考慮することと、最低限度の生存保障を求める基本権(基本法20条と結びついた同1条1項) [連邦憲法裁判所第一法廷2016.7.27決定]」自治研究94巻9号(2018.9)142-150頁