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2023年3月28日火曜日

第296回研究会

  • 日時:2023年4月1日(土)14時~17時
  • 会場:慶應義塾大学(三田キャンパス)大学院棟1階313教室
    • *キャンパスマップはこちら:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html(→「③」の建物です)
    • *対面参加のための事前申込み等は不要です。会場にそのままお越しください。
    • *会場ではレジュメのみを配布しますので、判決文の全訳については各自、下記アドレスよりダウンロード・印刷をしていただくようお願いいたします。
    • なお、会場ではeduroamアカウントでWi-Fiを利用することができます。
  • Web参加:Web会議システム「Zoom」を併用して開催します:アクセス先は月報をご確認ください。
    • *報告に使用する資料は、報告の前日18時までに下記アドレスにアップロードします:アクセス先は月報をご確認ください。

  • 報告者:山本真敬(新潟大学)
  • 報告判例:2022年4月26日の第1法廷決定(1 BvR 1619/17 – バイエルン憲法擁護法部分違憲判決)
  • https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/04/rs20220426_1bvr161917.html

  • 判決要旨:
  1. 現行法によれば、憲法擁護官庁は、監視および危険の前段階での解明という特殊な任務を遂行し、その際、警察当局のように強制力のある措置に接続する権能(operative Anschlussbefugnisse)を持たないということは、原則として、憲法擁護官庁の監視権能を修正された侵害の閾値に拘束することを正当化する。しかし、この場合、それによって取得した個人関連データおよび情報の提供は、厳格な前提条件に服さなければならない。
  2. 憲法擁護官庁の具体的な秘密の監視措置がどの程度厳格に比例性の要請に服するかは、その都度の侵害の重大さによって決せられる。
    • a)人格の最も広範囲の把握に至り得る措置は、警察による監視措置と同様の比例性の要請に服する。
    • b)そのような措置でない場合には、憲法擁護官庁の監視権能は、警察的な意味での危険の存在に結び付けられる必要はない。しかし、その場合、憲法擁護に特有な解明の必要性が充分に存することが、その前提条件となる。この前提条件が存在するのは、個別事例において、特定の、情報機関の監視を必要とする試みの解明をするための監視措置が要請され、かつ、監視の必要性に関する事実に基づく手がかり(tätsachliche Anhaltspunkt)が充分に存在している場合に限られる。このことは、監視措置の侵害の重大性が大きければ大きくなるほど、ヨリ切迫したものでなければならない。立法者は、その都度必要となる監視の必要性についての基準を充分に確定し、明確に規律しなければならない。監視活動に含まれる者が、自身がその試みにおいて活動していないか、その試みのために活動していない場合には、特別の諸要件が存在する。当該措置の侵害の強度によっては、その措置を実施する前に、当該措置を独立した機関による統制に服せしめることが必要な場合があり得る。
  3. 個人関連データと個人関連情報を憲法擁護官庁が他の機関に提供することは、新たな基本権侵害を根拠付ける。その正当化は、少なくとも、当該データが諜報機関的手段(Nachrichtendienstliche Mittel:nd-Mittel)によって取得されたものである場合、仮想的な新規取得の基準に従って判断されなければならない。その基準によれば重要となるのは、その都度の提供目的ついて、提供される側の官庁に、当該憲法擁護官庁による過去の監視に匹敵する深刻さの手段で自らデータ取得および情報獲得が許されていたであろうかどうかである。憲法擁護官庁による提供は、当局が特に重要な法益の保護に資することを常に前提としている。これに対して、提供の閾値に関する要件は、いかなる機関に提供されたかによって異なる。
    • a)治安維持官庁への提供は、その提供が、特に重要な法益の保護に奉仕し、そしてその法益に対して少なくとも充分に具体化された危険が存在することが、前提条件となる。
    • b)刑事訴追官庁への提供は、特に重大な犯罪の訴追のためにのみ考慮し得るものであり、特定の事実によって根拠付けられた嫌疑が存在し、その嫌疑について、具体的かつ濃密な事情が事実の根拠(Tatsachenbasis)として存在することが条件となる。
    • c)その他の機関への提供は、特に重要な法益を保護するためにのみ許される。提供の閾値に対する憲法上の諸要件は侵害の重大性によって異なり、その重大性はまた、提供される側の官庁がどのような実施することと接続する権限を有しているかによっても変わることになる。憲法擁護官庁への提供は、それが特定の、情報機関による監視の必要な行動またはグループの解明のために当該情報を必要とするということの充分な事実に基づく手がかりが存在する場合に、考慮し得る。
    • d)海外への提供についても、国内での提供と同様の諸要件が妥当する。加えて、提供は、提供された国家において、データ保護法上適切であって、基本的人権の保障が両立し得るような形で提供された情報が取り扱われること、そしてそれが確認されていることが、その前提条件となる。
  4. 規範の明確性の要請は、法律において参照の連鎖(Verweisungsketten)を用いることに対して、限界を画する。見通すことができないような参照の連続は、基本権上の諸要請と両立し得ない。


クリップボード@月報第306号

  • 齋藤暁「憲法学の方法としてのドグマーティク――ドイツにおける実務志向的な法学の様相」民商法雑誌158巻6号(2023年2月)

  • 玉蟲由樹「気候保護決定の基本権ドグマーティク」日本法学88巻3号(2023年1月)

  • 司法研修所論集132号(2023年3月)
    • アンドレアス・フォスクーレ(栗島智明訳)「憲法の変遷とその限界」
    • 鈴木秀美「コメント」

  • 法学セミナー818号(2023年3月)
    • 玉蟲由樹「性風俗営業に対する差別的取扱い」
    • 宮村教平「[憲法へようこそPartⅡ【Unit2】More Freely!]生存権とその可能性」
    • 栗島智明「[憲法と行政法の交差点【第12回】]「コップの中の嵐」と裁判所――部分社会論のゆくえ」

  • 自治研究99巻3号(2023年3月)
    • 松原光宏「感染症パンデミックにおける公法上の重要問題(一)――「ロックダウン」規制について」
    • 宮村教平「立法過程の構造と解釈(二)──その序論的考察」
    • カール=フリードリッヒ・レンツ「[ドイツ憲法判例研究(262)]租税手続法の利率規定に関する違憲決定」

2023年3月1日水曜日

第295回研究会

日時:2023年3月4日(土)13時~18時 

*2名の報告があります。開始・終了時間にご注意下さい

会場:慶應義塾大学(三田キャンパス)研究室棟1階会議室A・B

  • キャンパスマップはこちら:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html(→「⑨」の建物です)
  • 対面参加のための事前申込み等は不要です。会場にそのままお越しください。
  • 会場ではレジュメのみを配布しますので、判決文の全訳については各自ダウンロード・印刷をしていただくようお願いいたします。
  • なお、会場ではeduroamアカウントに加えてゲストとしても慶大のWiFiに接続できます(接続先は月報第305号をご確認ください)。

Web参加:Web会議システム「Zoom」を併用して開催します

  • アクセス先は月報第305号をご確認ください。


  • 報告に使用する資料は、報告の前日18時までにアップロードします:アクセス先は月報第305号をご確認ください。
  • 今回、研究会終了後のリモート懇親会は開催しません。
  • 月例会を、科研費(基盤B)「憲法秩序の領域分化をめぐる法的論証作法の日独比較」(研究代表:鈴木秀美)による研究会との共催とします。


【報告①】13時~15時30分(予定)

報告者:波多江悟史(愛知学院大学)*オンライン報告

  • 報告判例:2021年7月20日第1法廷決定(BVerfGE158,389 – Staatsvertrag Rundfunkfinanzierung)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2021/07/rs20210720_1bvr275620.html

  • 判決要旨:

  1. 放送の自由(基本法5条1項2文)に基づき、国家には、公共放送局の機能適合的財源を保障する作為義務が課せられるが、当該義務には、公共放送局の基本権上の財源請求権が対応する。国家が当該義務を履行しないことについて、公共放送局は憲法異議手続の中で攻撃を行うことができる。
  2. 国家の財源保障義務(基本法5条1項2文)は、連邦上の責任共同体において連帯責任を負う各州に課せられる。連帯責任は、各州は放送財源に関する立法権限を有しているが、現在では、州横断的に放送の機能適合的財源を規律することだけが、基本権保護を実現することができるということに基づいている。
  3. 現在の放送財源システムにおいて、個々の州が単独で放送負担金の値上げを拒否することは――まして支持可能な理由に基づかない場合には――許されない。

【報告②】15時30分~18時(予定)

報告者:中西優美子(一橋大学)

  • 報告判例:2022年2月9日の第2法廷決定(CETAの暫定適用を認めた決定)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2022/02/rs20220209_2bvr136816.htm

  • 判決要旨(DÖV掲載のもの):

  1. 2016年10月28日のCTEAの暫定適用に関するEU理事会決定は、Ultra-vires行為として認定されず、また、それによって基本法20条1項及び2項の意味における民主主義原則はかかわってこない。個々の分野に対するEUの条約締結権限に議論の余地がある限り、暫定適用は制限される。
  2. 確かに、CETAの裁判所及び評議会制度に高権がさらに移譲がされる限り、これが基本法23条1項からの統合授権によりカバーされるか否かは疑わしい。そのような危険性は、暫定適用の制限およびCETA混合評議会にかかわる理事会付属書の宣言により排除される。
  3. 基本法20条1項及び2項に鑑みたCETA混合評議会の決定の民主主義的正統性及びコントロールが疑わしくみえる限りで判断すると、CETAの暫定適用にあたっては憲法アイデンティティ(基本法79条3項)の何等かのかかわりは懸念されえない。


講演会のお知らせ

1.ヨハネス・マージング教授 

マージング教授の講演会等についてヨハネス・マージング教授(フライブルク大学)が日本学術振興会の「外国人招へい研究者」として2023年3月7日に来日され4月5日まで30日間、日本に滞在されます現時点で、ドイツ憲法判例研究会との関係では以下のような講演会や研究会の開催が予定されています。講演会や研究会はドイツ語で行われますが、いずれも通訳付きです。春休み中ですが、ご参加いただければ幸いです。
 

・3月9日(木)15時、慶應義塾大学講演会(ハイブリッド開催)

  • *近日中に別途、ご案内します。
  • テーマ:インターネット時代における民主的コミュニケーションDemokratische Kommunikation im Zeitalter des Internets
  • 会場:三田キャンパス東館4階オープンラボ
  • コメンテーター:石塚壮太郎(日本大学准教授)、通訳:栗島智明(埼玉大学准教授)

3月11日(土)15時、中央大学講演会(ハイブリッド開催)

  • テーマ:ドイツの憲法判例における表現の自由(仮題)
  • 会場:市ヶ谷キャンパス市ヶ谷キャンパス2511号室
  • 通訳:松原光宏(中央大学教授)
  • *要事前申込(3月2日まで)申込フォームは月報第305号をご確認ください。

3月20日(月)午後、日本大学講演会(ハイブリッド開催)

  • テーマ:情報の処理と拡散からの保護-ドイツ憲法における人格の自由な発展の権利Schutz vor Verarbeitung und Verbreitung von Informationen – das Recht auf die freie Entfaltung der Persönlichkeit nach deutschem Verfassungsrecht
  • 会場:日本大学法学部(神田三崎町キャンパス)10号館1041講堂
  • *キャンパスマップはこちら:https://www.law.nihon-u.ac.jp/campusmap.html
  • 通訳:栗島智明(埼玉大学准教授)

3月27日(月)15時、京都大学にて毛利透会員・高田篤会員との研究会

  • 会場:京都大学法経第11教室(法経本館1階西ウイング)
  • 報告①:磯村晃(大阪大学招へい研究員) Die Aktualität der Lehre Masings - Dogmatik des Untersuchungsrechts in Art.44GG(マージング学説の今日的重要性―基本法44条における調査権のドグマーティク)
  • 報告②:門田美貴(慶應義塾大学大学院生) Aktuelle Entwicklungen der Versammlungsfreiheit - Das Fraport Urteil und das Recht der freien Ortswahl(集会の自由論の展開:フラポート判決と集会の場の選択権)(仮題)
  • *本研究会の会員の若手研究者2名がマージング教授のご業績について報告したうえで、同教授をまじえて討論するというセミナー形式の研究会です。

4月4日(月)午後、ドイツ憲法判例研究会のための講演会(ハイブリッド開催)

  • テーマ:連邦憲法裁判所における裁判官としての経験(仮)
  • 会場:慶應義塾大学(教室は未定)通訳:小山剛(慶應義塾大学教授)

クリップボード@月報第305号

藤川直樹『王統と国家――近代ドイツ公法学における〈君侯法〉の展開』(弘文堂、2023年2月)

阪大法学72巻3=4号(谷口勢津夫教授退職記念号)(2022年11月)
  • 高田篤「ケルゼン「理論」とイエッシュ「理論」の方法論的位置関係と布置:法律による行政原理をめぐって」
  • 松本和彦「法源としての憲法判例の意義と射程」

松本和彦「気候変動訴訟の世界的展開」環境と公害52巻3号(2023年1月)

法律時報95巻1号(2023年1月)
  • 毛利透「新型コロナへの対応をめぐる憲法上の議論——ドイツの場合」
  • 松本奈津希「[憲法訴訟の醸成——実務と学説が導く可能性・19]生存権訴訟の類型化と審査のあり方—自由権的側面を起点として」

法学教室 508 号(2023 年 1 月) 
  • 柴田憲司「憲法事例分析の技法〔第10回〕医薬品のネット販売規制と職業の自由(後)」 
  • 鵜澤剛「【演習】行政法」
  • 毛利透「【判例セレクト Monthly】本国で日本国民と同性婚を行った外国人の在留資格(東京地判令和4・9・30)」

法学教室 509 号(2023年2月)
  • 斎藤誠「【巻頭言】大著の効能――立法審査をめぐって」
  • 山中倫太郎「日本の防衛法制」
  • 鵜澤剛「【演習】行政法」

法学セミナー815 号(2023 年 1 月)
  • 木下智史=松本和彦村西良太片桐直人=伊藤建「[FOCUS憲法3【第10回・最終回】][座談会]アク チュアルな問題と憲法学・憲法訴訟の役割(その 2)」

法学セミナー817 号(2023 年 2 月)
  • 片桐直人「[憲法へようこそ PartⅡ【Unit1】]鶏肉は食べられない!――思想・信条に基づく行為とその制約」
  • 鵜澤剛「[憲法と行政法の交差点【第11回】]法令の違憲・違法を争う訴訟と司法権」
  • 高田倫子「[最新裁判例研究]芸術祭に対する市の負担金の減額変更が争われた事例[名古屋地判令和4・5・25裁判所ウェブサイト]」

自治研究99巻1号(2023年1月)
  • 柴田尭史「[ドイツ憲法判例研究(260)]アムリ調査委員会事件」

自治研究99巻2号(2023 年2月)
  • 中西優美子「[EU 法における先決裁定手続に関する研究(51)]EU 法の優位原則と国内裁判所の先決裁定 を求める権利の保障(Ⅱ(12))」
  • 宮村教平「立法過程の構造と解釈(一)――その序論的考察」
  • 太田航平「[ドイツ憲法判例研究(261)]裁判官留保と待機業務」