日時:2019年3月2日(土)14時~
場所:日本大学法学部4号館(地下)第4会議室A
報告者:三宅雄彦(駒澤大学)
報告判例:2018年6月12日の第2法廷判決(2 BvR 1738/12, 2 BvR 1395/13, 2 BvR 1068/14, 2 BvR 646/15)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2018/06/rs20180612_2bvr173812.html
決定要旨:
1.基本法9条3項の保護領域の人的範囲には、官吏も含まれる(判例集19巻303、312、322頁参照)。勿論、団結自由の基本権の保障に留保はないけれども、この基本権は、これと競合する第三者の基本権、及び憲法の位階を持つ他の権利により制限されうる。
2.a) 官吏のストライキ禁止は、基本法33条5項の意味における職業官僚制の本来的で伝来的な原則の一つである。この禁止は、伝来的原則として必要な条件である伝統性と実体性を充足している。
b) 立法者は、職業官僚制の伝来的原則としての官吏のストライキ禁止を遵守しなければならない。この禁止は、官吏法上の扶養原理、誠実義務、終身原理、及び俸給を含む官吏法上の法関係の立法者による規律の原則、これらの諸原則と密接に結びついている。
3.a) 基本法の諸規定は国際法友好的に解釈しなければならない。欧州人権条約のテクスト及び欧州人権裁判所の判例は、憲法のレベルにおいて、基本法上の諸基本権及び法治国家的諸原理につき、その内容と射程を確定するための解釈上の補助手段として、用いられる(判例集74巻358、370頁、111巻307、317頁、128巻326、367-368頁。確定判例)。
b) 条約加盟国は、それが当事者である全ての法的事件において欧州人権裁判所の終局判決に従うことを、欧州人権条約46条により義務づけられているが(判例集111巻307、320頁も参照)、この46条の適用領域以外でも欧州人権裁判所の判例は条約当事国を方向づけるのであり、その際、これを文脈化して当該事件の具体的諸状況を特に考慮しなければならない。この嚮導/方向づけ作用が特に強く働くときがあるが、それは、類似事例が条約加盟国の法秩序の妥当領域の中で言及されて、それ故に欧州人権裁判所の決定が該当する条約加盟国の(別の)手続が該当する場合である。
c) 国際法友好的解釈は基本法により限界づけられる。条約友好的解釈が可能であるとしても、それは以下のときまでである。つまり、法律解釈及び憲法解釈として承認された方法からすれば、この条約友好的解釈がもはや合理的でないと思われるときである(判例集111巻307、329頁、128巻326、371頁参照)。ちなみに、基本法の条約友好的解釈の枠内にあるとしても、欧州人権裁判所の判決はできるだけ慎重に、分化した教義学を持つ既存の国内法秩序の中へと、組み込まねばならない。
4.ドイツにおける官吏のストライキ禁止は、基本法上の国際法友好性の原則と一致し、且つ、特に欧州人権条約の諸々の保障と合致する。欧州人権裁判所の判例を考慮した場合にも、ドイツ法と欧州人権条約11条の間に衝突状況があると確認することはできない。