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2020年9月5日土曜日

第270回研究会


● 日時:           202095日(土)14時~17
● 会場:           Web会議システム「Zoom」を使用して開催します(詳細は月報をご覧ください)
● 報告者:       棟久敬(秋田大学)
● 報告判例:   2020114日の第2法廷決定(2 BvR 1333/17、司法修習生のスカーフ事件)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2020/01/rs20200114_2bvr133317.html
 
➣ 決定要旨
1. 司法修習生が、国家の代表者のように見える活動、または見える可能性のある活動において、宗教的な根拠を持つ服装規定を遵守することによりある宗教団体へ自らが所属していることを明らかにしてはならないという司法修習生に課された義務は、基本法41項及び2項により保障される個人の信仰の自由を侵害する。
2. 信教の自由への侵害をこの状況において正当化しうる、信仰の自由と衝突する憲法上の利益として考慮されるのは、国家の世界観的・宗教的中立性の原則、司法の機能遂行能力(Funktionsfähigkeit)の原則および基本権として保護される第三者の消極的な信教の自由の可能性である。これに対して、裁判官の公平性(Unparteilichkeit)の要請や世界観的・宗教的な平和の確保という観念は〔本件の信仰の自由への侵害を〕正当化する効力を発揮することはない。
3. 国家の中立性への義務づけは、国家の公職担当者(Amtsträger)の中立性への義務づけに他ならない。というのも、国家は人間によってのみ行動しうるからである。もっとも、国家は必ずしも公職の遂行の折にその公職担当者によってなされるあらゆる私的な基本権の行使と同一視されるとは限らない。しかし、国家が―司法の領域におけるように―公務の遂行の外面的な徴表へ特段の影響を与えるような場合には、そうした同一視が問題となる。
4. いかなる裁判も基本権の擁護に奉仕するのであるから、司法の機能遂行能力は法治国家の基本的な条件であるとともに、基本法の価値体系にしっかりと定着している。機能遂行能力が前提とするのは、個々の裁判官の人格に対してだけでなく、司法全体に対しての社会的な信頼がある、ということである。全国民の「絶対的な信頼」は確かに達成することはできない。しかし、国家には最適化の任務が課せられている。
5. まさに宗教的・多元的な社会を反映することを目的とした宗派に開かれた共同学校の領域とは異なり、国家は司法においては古典的・高権的に、そのためもっと大きな侵害の効果をもって市民に向き合う。
6. 裁判官が職務中に宗教的なシンボルを着用することは、当該裁判官の客観性に疑念を生じさせるのにふさわしいとは、それ自体としては考えられない。
7. 寛容の要請を考慮して憲法上の利益間の規範的な緊張関係を解決することは、なかんずく民主的な立法者の責務である。民主的な立法者は、公的な意思形成過程においてすべての人にとって受け入れられうる妥協点を見出さなければならない。宗教的な関連性を有する標識を用いることを最大限自制するように、すべての宗派の司法機関の構成員に義務づける規制が、憲法上の地位を有する価値によって正当化されるか否かを左右する実際の状況と今後の動向に関する判断について、民主的な立法者は評価特権を有する。
8. 手続の対象となっている禁止の具体的な内容形成にかんがみると、法廷で異議申立人に宗教的なシンボルの着用を憲法上禁止または許容せざるをえなくなるほどの圧倒的な重みづけは、本件で衝突しているいかなる法的地位にも与えられない。それゆえ、司法修習期間中に世界観的・宗教的な観点において中立的にふるまう義務についての立法者の決定は憲法上の見地から尊重されなければならない。