日時:2023年12月2日(土)14時~17時
会場:日本大学法学部本館141講堂
報告者:岡田健一郎(高知大学)
報告判例:2021年6月8日の第1法廷決定(BVerfGE 158, 170: 1 BvR 2771/18 - (IT-Sicherheitslücken ITセキュリティ脆弱性
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2021/06/rs20210608_1bvr277118.html
判決要旨:
- 基本法10条1項は防御権を根拠づけることと並んで、通信の秘密に該当するコミュニケーションに対する第三者による侵害からの保護の国家への委託を根拠づけている。
- a)ITシステムの機密性と完全性に関する基本権上の保障は、国家に対し、システムに対する第三者による攻撃からの保護に寄与することを義務づける。
b)国家の基本権保護義務はまた、一方で未知の脆弱性を用いた第三者による攻撃からITシステムを保護すること、他方で危険防除に役立つ端末通信傍受を可能にするそのような脆弱性を開いておくこと、という諸目的の衝突を基本権適合的に解消するための調整も国家に要求する。 - 立法上の保護義務の違反を主張するためには、特別な主張責任が存在する。そのような憲法異議は、法律上の調整関係を全体的に把握しなければならない。そこには、異議を申し立てられている規範の集合体の調整について説明し、それらが総じて〔ITシステムを〕憲法上不十分にしか保護していない理由を根拠づけることが含まれている。
- 憲法異議が法律に直接向けられている場合は、補完性の原則に従い、行政裁判上の確認の訴えもしくは差止めの訴えの提起も今回の法的手段〔憲法異議〕の前に必要である。このことは以下の場合には必要ない、すなわち、ある規範の評価のみが特定的に憲法上の問題を惹起しており、そして、先行する専門裁判所の審査によってより良い判決の基礎が提供されることが期待されない場合には。このことはまた、立法上の保儀義務違反に対する異議申立の場合でも同様である。