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2015年2月24日火曜日

ゲッティンゲン便り(三宅雄彦会員のドイツ在外研究報告)

 ゲッティンゲン大学で在外研究中の三宅会員にお願いして、以下の通り、在外研究報告として「ゲッティンゲン便り」を寄稿していただきました。

「2013年8月から(その後フンボルト財団奨学金の支援もあり)、ゲッティンゲン大学にて在外研究の機会を得ました(2015年4月までの予定)。
 受け入れ教授は、国法学及び教会法を専門とする、ハンス・ミヒャエル・ハイニヒ教授(Prof. Dr. Hans Michael Heinig)です。今回の在外研究は、ゲッティンゲン図書館が所蔵するスメント文庫の調査について、またドイツ国法学と福音主義教会法学との連関に関する研究について、助言を得るべく、ハイヒニ教授に受け入れをお願いして、実現したものです。彼はもちろん法学部の所属ですが、神学部の準構成員、そして、ドイツ福音主義教会(Evangelische Kirche in Deutschland: EKD)が設置する、スメントが創設した教会法研究所(Kirchenrechtliches Institut)の第3代所長でもあります。彼の下には、正確には、法学部の講座のスタッフと、教会法研究所のスタッフとがおり、彼らは、法学部裏にある小さな美しい建物で、実質的に一体的に活動しています。
 教会法研究所(http://www.ekd.de/kirchenrechtliches_institut/)は、ドイツにおける福音主義教会法学の中心的地位を占める存在です。ハイニヒ教授、ムンゾニウス博士(Dr. Hendrik Munsonius)、フォーゲル博士(Dr. Viola Vogel)(2014年夏学期まで)、リープヒェン氏(Stephan Liebchen)(2014年冬学期から)が中心となり、福音主義教会法雑誌(Zeitschrift für evangelisches Kirchenrecht: ZevKR)の編集、教会法に関する各種の鑑定書の作成が、更には、私自身は参加の機会はありませんでしたが、教会法律家大会(Kirchenjuristentagung)、ルター派教会委託の牧師研修などの開催も行われています。また、研究員、博士候補生の中でも、宗教団体の地位、宗教教育の体制、教会法律の構造、国際経済法上の仲裁裁判など、国法学、国家教会法、教会法上の多岐に渡る論点が、活発に研究されています。
 ハイニヒ教授ご自身は、デュッセルドルフ大学でモアロク教授の指導で博士号を、ハイデルベルク大学でハヴェアカテ教授の指導で教授資格をそれぞれ取得され、2007年にゲッティンゲン大学教授に着任されました。教会法以外にも、社会保障法、EU憲法、法哲学など幅広い関心を持つ、若手国法学者です(1971年生まれ)。2015年10月シュパイアーで開催の国法学者大会の報告予定者でもあります。彼の著書や論文、彼との対話からは、教会法研究所初代所長スメントの後継者であるとの自覚がひしひしと感じられ、それに加えて、合理化や機能化を志向するドイツ国法学界の中で、非合理なもの、実体的なものにも正当な目配りを行う、ハイニヒ教授の憲法学及び国法学には、彼の人柄と併せて大いに魅力を感じているところです。
 ゲッティンゲン大学法学部の公法講座スタッフは、ハイニヒ教授の他、マン教授(Prof. Dr. Thomas Mann)(1963年生)、パウルス教授(Prof. Dr. Andreas Paulus)(1968年、連邦憲法裁裁判官を兼務)、ショーコプフ教授(Prof. Dr. Frank Schorkopf)(1970年生)、フォン・デア・プフォールテン教授(Prof. Dr. Dr. Dietmar von der Pfordten)(1965年生、法哲学)など、比較的若い世代の、注目すべき研究者が多数在籍しています。もちろん、われわれドイツ憲法判例研究会が大変お世話になってきた、シュタルク教授、ホイン教授とも親しくお話しする機会を多くありましたし、更に、法学部のスタッフを中心に構成される、ゲッティンゲン法科学協会(Göttinger Rechtswissenschaftliche Gesellschaft)にも参加させて頂きました。
 その他、ハイニヒ教授のご仲介で、スメント次男の、フリードリヒ・スメント教授からご自宅にご招待いただき、また、スメント文庫所蔵の文書の扱いにつき大変貴重なご助言を多く得ました。更に今回の滞在期間中に、国法学者大会への参加を、2013年10月(於グライフスヴァルト)と2014年10月(於デュッセルドルフ)に許され、大変な刺激を受けました。その際、これまで保障国家論研究で私自身も注目してきた、イエナ大学のクナウフ教授(Prof. Dr. Matthias Knauff)との知己を得ましたが、この2月にその彼の招待、そしてヘルムート・レーニング国家科学センター(Hellmuth-Loening Zentrum für Staatswissenschaften Jena)の主催で、日本のスメント研究の状況、私自身のスメント研究について、美しいシラーの旧邸宅で報告し、議論する機会を得ました。
 このように、ゲッティンゲンの地で今後の研究の為の新たな基盤を得ることができました。今回の在外研究にご支援とご助言をいただきました、栗城壽夫先生、戸波江二先生、鈴木秀美先生、高田篤先生、畑尻剛先生、川又伸彦先生はじめ多くの先生方に、この場を借りて改めて御礼を申し上げたいと思います。」