「公共放送の財源について合憲性が争われた日独の口頭弁論を傍聴して」
鈴木秀美
2018年5月16日、連邦憲法裁判所において、放送負担金(Rundfunkbeitrag)についての憲法異議を審理するための口頭弁論が開かれました。私は事前に傍聴席を電子メールで予約し、この口頭弁論を傍聴しました。口頭弁論は、5月16日と17日の2日間で行われる予定でしたが、実際には16日だけで終了しました。ただし10時から始まり、何回かの休憩を経て、終了したのは19時少し前でした。
2013年1月から導入された放送負担金は、個人の場合は住居ごとに、事業所の場合は従業員数と車の保有台数を手がかりに額を算出して徴収されています。憲法異議では、「負担金」とは名ばかりで「税金」であり、その場合、州には立法権がないので現行法は違憲であるとの主張、また、何人で住んでいても、また一人で2つの住居を所有していても、住居ごとに同額の放送負担金を支払わなければならないのは不平等であり、また、レンタカー会社であっても一般企業と同じように車の保有台数で放送負担金の額が決まるのは不平等であるとの主張などがなされています。
口頭弁論では、憲法異議を申し立てた側および合憲性を主張する州政府・公共放送がそれぞれ見解を明らかにした後、キルヒホフ副長官や他の7人の裁判官から、合憲性を争っている両当事者に厳しい質問が次々と投げかけられ、関係者は自己の立場を懸命に主張していました。その模様は、Frankfurter Allgemeine Zeitungでも詳しく報じられています(http://www.faz.net/aktuell/politik/inland/rundfunkbeitrag-wird-vor-dem-bundesverfassungsgericht-verhandelt-15593618.html)。
財務省審議会のメンバーで鑑定人として口頭弁論に参加し、意見も述べたヴァルトホフ先生(フンボルト大学)に後から伺ったところによると、口頭弁論でどのような論点をどのような順番で取り上げるか、Gliederungは前もって知らされているものの、具体的に誰がどの順番で発言を求められるか等の詳しいことは知らされていなかったとのことでした。
日本では2017年12月6日に最高裁大法廷がNHK受信料について合憲判決を下しました。私はそれに先立ち行われた口頭弁論も傍聴しましたが、最高裁の口頭弁論は、両当事者の弁護士が事前に提出した文書を読み上げただけで、1時間もかからずに終了しました。同じ口頭弁論とはいえ、日独の差は大きいと感じました。
ドイツの放送負担金の合憲性については、Abgabenrechtの問題であるためマージング裁判官ではなく、パウルス裁判官がBerichterstatterです。州政府・公共放送は、公共放送の財源のあり方についての立法裁量の問題として合憲性を主張しています。ドイツでは数か月以内に下される見込みの連邦憲法裁判所の判決に注目が集まっています。