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2021年1月9日土曜日

第273回研究会

● 日時:           2020年12月5日(土)14時~17時

● 会場:           Web会議システム「Zoom」を使用して開催します(詳細は月報をご覧ください)

● 報告者:       カール=フリードリッヒ・レンツ(青山学院大学)

● 報告判例: 2020年5月5日の第2法廷判決(2 BvR 859/15ほか、PSPP判決)

https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Entscheidungen/DE/2020/05/rs20200505_2bvr085915.html

● コメンテーター:栗島智明(埼玉大学)

➣ 決定要旨:

1. 権限踰越の審査、基本理念侵害の審査の際、欧州連合の機関・関連主体の行為について、効力または解釈の問題が生じる場合、連邦憲法裁判所は審査の際に、原則としてEU裁判所が当該行為について行った内容・評価を前提とする。

2. EU条約19条1項2文で認められているEU裁判所への裁判に関する委託は、条約の解釈が理解不能のために客観的に恣意的である場合に、終了する。EU裁判所がその限界を超えた場合、その行動がEU条約19条1項2文・ドイツ国内同意立法の根拠を欠けることになる。そのために、当該判断は最低限でもドイツのために、憲法23条1項2文、20条1項・2項、79条3項によって必要である民主主義上の最低限の妥当性を欠けることになる。

3. 加盟国の中心的な利益に関わる場合(欧州連合の管轄権および欧州連合の民主的に正当化されている統合過程の解釈は原則としてそれに該当する)、欧州中央銀行が主張する目的について、裁判上の審査はそれを無条件に鵜のみしてはならない。

4. 行動する機関の幅広い裁量をEU裁判所の限定された審査密度と合わせた場合、限定されている個別権限の原則を明白に十分に順守していない。これでは、加盟国の管轄を継続的に解体できることになる。

5. 欧州連合の管轄に関する原則を順守することは、民主主義を確保するに決定的に重要である。統合過程の不可逆性により、欧州連合の基本原則の一つである限定されている個別授権が実質的に無視される結果になってはならない。

6. a) 欧州連合および加盟国の間の権限峻別の際、比例原則は民主主義・国民主権のために重大である。比例原則の無視は、欧州連合の管轄の基礎に変更を加え、限定されている個別権限の原則を迂回するおそれがある。

b) 国債を購入する制度が比例原則を侵害しないことは、目指す目標を達成することに適していること、そのために必要であることを前提とするが、更に通貨政策上の目標および生じる経済政策上の効果を明示し、評価し、斟酌することを前提とする。通貨政策上の目標を無条件に追及して経済政策上の効果を配慮しないことは、欧州連合条約5条1項2文および4項の比例原則を明白に侵害している。

c) 欧州中央銀行機構が経済政策・社会政策の管轄を有しないことは、欧州連合条約5条1項2文、4項の観点で、国債の購入制度が国家債務の残高、貯金、老後予備、不動産相場、経済的に生存できない企業の生き残りに発生する効果を把握し、これらの効果を目指す目標と関連することを、排除しない。

7. PSPPのような制度がEU運営条約123条の明白な迂回に該当するか否かは、個別基準の順守で決定されない。総合的な評価に基づいて判断される。特に33%の購入限度額および購入を欧州中央銀行の資金割合に基づいて分配することは、PSPPに基づいて一定の加盟国のために措置が取られること、ユーロ制度がある加盟国の多数債権者になることを阻止している。

8. PSPPに基づいて購入した国債に関するリスクを(事後的)に変更する場合、ドイツ連邦議会の予算に関する総合責任の限界を侵害ことになり、憲法79条3項と両立しない。その場合、憲法が禁止している第三者の意思決定について保証することを意味し、その効果を事前に計算できない。

9. 連邦政府および連邦議会は、欧州連合統合に関する責任に基づいて、欧州中央銀行による比例原則の検討を要請する義務を負う。当該法解釈を欧州中央銀行に対して主張しなければならない、またはその他の方法で条約を侵害しない状況に戻るようにしなければならない。

10. 憲法上の機関、行政庁および裁判所は、権限踰越行為の成立・実施・執行・管理に加担してはならない。この点は、連邦銀行にも妥当する。